サービス立ち上げのリアルが分かるプロジェクト秘話

f:id:jmdtecheditor:20220222123452p:plain

長年蓄積してきた医療ビッグデータをもとにさまざまなサービス・プロダクトを展開しているJMDCでは、新規サービスの立ち上げも積極的に行っています。企業の産業保健活動をサポートするICTソリューション「Pep Up for Work」(ペップアップフォーワーク)もそのひとつで、2021年に本格的にプロジェクトがスタートしました。

今回は、Pep Up for Workプロジェクトチームの4名にインタビューを実施。立ち上げフェーズに向き合っている彼らは今どんな経験をしているのか、リアルなストーリーを語ってもらいました。

f:id:jmdtecheditor:20220222123626p:plain:w500
Pep Up for Work チーム 株式会社JMDC プロダクトインキュベーション室所属

八木 瑞希
システムの法人営業を経て、2014年9月にJMDC入社。保険者向けの営業やマーケティング部、新規事業開発部にて商品企画やプロモーション等を担当。2021年4月から現職のセールス・マーケティングを担当する。

黄 俊
中国出身。来日後は日系・外資問わずSler企業を中心に新規開発やPM職を経験。前職のWebマーケティング会社でPdMを務める。2021年6月、JMDCに入社。企画やPdMを担当。

満尾 芽依
自社開発システムの営業を経て、金融情報サービス会社にてタブレット・スマホアプリのディレクション等を経験。前職のネット銀行ではFinTechサービスの企画・推進を担当した。2021年7月、JMDC入社。主にリード獲得のマーケティングを担当する。

北條 亮
大手警備会社を経て、タニタヘルスケアリンク、DeNAヘルスケアで法人営業を経験。スタートアップCOOを経て、2021年9月にJMDC入社。主にセールスやマーケティングを担当。

JMDCで初となる一般企業に向けた新規サービス

ーーPep Up for Workとは、どんなサービスなのでしょうか?

八木:Pep Up for Workは、企業の産業保健活動をトータルでサポートするICTサービスです。産業保健活動とは、企業で働く人の健康に配慮し、個々のモチベーションや生産性向上に加えて、安心して働ける組織につなげる活動を指します。

f:id:jmdtecheditor:20220222124029p:plain:w300f:id:jmdtecheditor:20220222124034p:plain:w300

具体的には、ストレスチェック、パルスサーベイ、健康診断管理、産業医面談管理などの機能を通して、従業員の心身の健康促進を支援しています。

・ストレスチェック:従業員50人以上の事業所で義務付けられている検査。検査の結果、「高ストレス者」となった従業員から申し出があった場合、産業医等の医師による面談指導を実施する。

・パルスサーベイ:企業が社員の満足度や業務における疲労度蓄積などを把握するための意識調査。脈拍(=パルス)のように短期間に調査を繰り返すことで、絶え間なく変化していく社員や現場の状況を知ることができるのが特徴。

Pep Up for Workの主な機能
f:id:jmdtecheditor:20220222124427p:plain:w500

:Pep Up for Workは、JMDCのPep Upという健康増進プラットフォームの企業版と考えると分かりやすいですね。

Pep Upは健康保険組合が導入し、保険加入者が利用するサービスです。2016年のリリース以降、順調に成長しユーザーID数は300万を突破。マーケットでも存在感を発揮しています。

一方、Pep Up for WorkはPep Upと同じBtoBtoCのビジネスモデルですが、一般の企業(人事労務)向けのサービスです。Pep Up が健康状態の可視化や運動を通した生活(Life)習慣改善が中心なのに対して、Pep Up for Workは、主に従業員のメンタルヘルスに着目しています。どちらのサービスもなくてはならない両輪として導入いただける状態を目指しています。

ーーPep Up for Workは、どんな経緯で立ち上がったのでしょう?また現在はどのフェーズにありますか?

北條:ヘルスケアデータを活用したICTサービスを広げていくには、既存顧客(健康保険組合や製薬企業等)のみならず、一般の企業向けにマーケットを開拓していく必要があるとの認識からスタートしました。

2021年から具体的にスタートし、現在はお客様にテスト的に導入してもらい改修のサイクルを回しているところです。まずはPMFに向けて、何が必要なのかチームで試行錯誤しながら進めている段階ですね。

ーーチーム内での皆さんの役割について聞かせてください。

八木:プロダクトインキュベーション室長の大山さんと黄さんが企画とプロダクトマネジメントを担当し、僕と北條さんがセールス&マーケティング、満尾さんが主にマーケティングを担っています。他にエンジニアやデザイナーの開発チームも一緒にやっています。

f:id:jmdtecheditor:20220222124633p:plain:w500
八木さん

それぞれ役割はあるとはいえ、立ち上げフェーズでもあるため、チームのみんなで施策について議論して動いています。

僕は、2021年4月に別の部署から異動し、Workの立ち上げメンバーになりました。これまで主に保険者領域で、Pep Upのセールス立ち上げや新設のマーケティング部門、新規事業開発部で商品企画やプロモーションを経験して今に至ります。ここにいる僕以外のメンバーは2021年に入社してWorkのチームに加わりました。

――そうなのですね。黄さん、北條さん、満尾さんがJMDCにジョインした理由は何だったのでしょうか?

:JMDCを知ったのは、たまたま前職の保険組合がPep Upを導入していて、ユーザーとして利用していたのがきっかけです。良いサービスだなと思っていたのですが、退職するとPep Upの健康記録が一切見られなくなってしまうことに気付いて。「これはもったいない。どうにかできないか?」と思ったのがJMDCに応募した直接の理由です。

タイミング的にも別の企業でPdMとしてのキャリアをさらに深めていきたいと考えていたので、思い切ってチャレンジすることにしました。

北條:私はこれから「健康経営」が日本企業の鍵になると思い、2014年にヘルスケア業界へ入り、タニタやDeNAで経験を積みました。ただ、ヘルスケア領域ではいまだ確立されたプラットフォームはないというのが実感です。

そこで、ヘルスケアのプラットフォーマーを目指すには?の観点から、複数の企業を見ていました。その中でもJMDCは、レセプト、健康診断、ライフログなど幅広いデータがすでに揃っていること、それらを活用したビジネススキームが確立されていることにアドバンテージを感じました。

さらに、HR系のデータが加わったらどんなことができるのだろうか。まだ答えのない問いではありますが、大きな可能性を感じてジョインしました。

満尾:私は新卒からずっとIT系のサービス企画をやってきました。前職は銀行のアプリ企画、その前は金融情報サービスの会社に在籍して、長らくFinTechのサービス作りに邁進していました。そこで満足できる結果も出せるようになり、違うフィールドで挑戦したいと考えるようになったんです。

そんな折、歯医者でレントゲンを撮ったら蓄膿症が見つかり治療することに。その後、かかりつけの内科に行った際、歯医者で撮った自分のレントゲンデータを見られない事実に違和感を感じたんですね。「ここってもっと変えていけるんじゃないか」と。さらに「今後はデバイスで自分の健康を管理する時代になる」と思い、次のキャリアとしてヘルステックでのチャレンジを選びました。

初回セミナー参加者が0人。大ピンチから始まった認知活動

――新規サービスの初期フェーズでは、様々な試行錯誤があるかと思います。特に印象に残っていることはありますか?

満尾:はい。Pep Up for Workのプロモーション目的で2021年7月にWebセミナーを初開催したのですが、何と参加者が0人だったんです。企業の人事宛てに1000件近くDMを送ってこの結果だったので「一体何が良くなかったのか?」と本当に衝撃でしたね…。

当時私は入社直後かつマーケティングの実務経験がほぼない中、サービス理解と同時にゼロからのウェビナー集客で、最初の3ヶ月はかなり四苦八苦していました。なかなか結果に結びつかないもどかしさを感じながら、セミナーをどうしていくかチームで話し合って立て直していったんです。

八木:僕も初セミナーで大コケしたことが1番印象に残っています。以前企画した保険者向けセミナーでは100人くらい集客できていて、セミナーは得意分野だと自負する部分もありましたからね。

健康保険業界では知名度が高くても、一般の企業ではほとんど知られていない。そんな中でのプロモーションは一筋縄ではいかないのだなと。でも落ち込んでても仕方ありません。AKBだって最初はお客さんが来なかったんですから(笑)改善するしかないと思いましたね。

満尾:最初のセミナーでは、Pep Up for Workという新サービスを紹介することに徹していたんですよね。でもそれは人事の方たちに響く内容ではなくて。いろいろ話し合ううちに、10月のセミナーでは、産業医の先生をゲストに招いてメンタルヘルスケアをテーマに発信しようと方向性が固まりました。

ちょうどWorkでもパルスサーベイ機能からリリースすると決まったタイミングでもあったのと、コロナ禍の今メンタルヘルスケアに関心があるのではと想定したんです。セミナー集客でもWeb広告や人事向けメディアでの情報発信など幅を広げていきました。

結果、100名近くの申し込みが入り、当日は約80名が参加。アポイントにもつなげることができました。皆さんの知恵を借りながら手探りで進めてきましたが、成果が出るようになって心底ほっとしたのを覚えています。

f:id:jmdtecheditor:20220222124942p:plain:w400
満尾さん

――試行錯誤の末、大きく挽回できたのですね。他に印象的なことはありますか?

:私が感じているのは、チームの連携の強さですね。過去のキャリアの中でも、今のWorkチームが最もフラットで話がしやすいチームだと思っています。役割は明確にあるのですが、皆さん「私はここからここまで」と線を引いておらず、お互い助け合うのが自然なんです。

PdMとしては、セールスの八木さんや北條さんから営業の動きやお客様のリアルな反応を聞けるのがとても貴重です。前職ではマーケティング部に所属し、新規開発のPdMを担当しましたが、営業部とは週1のミーティングでしか話す機会がなく、少し距離を感じていました。やはりオープンな情報共有は、新規事業のPDCAをスピーディーに回すにはなくてはならないものだと実感しているところです。

北條:確かにコミュニケーションはかなりこまめに取っていますね。デイリーの朝会や週次の営業戦略ミーティングだけでなく、「Workの方向性や強みをとことん話し合う」目的でロングミーティングも何度か実施しています。

八木:こうした会のファシリテーションは、北條さんが率先してやってくれていますよね。北條さんが加わってから、チーム内のコミュニケーションの質も量も大きく改善したと思います。

:まさに。私は北條さんの進行の仕方を参考にしているんですよ。オンライン会議で良いアウトプットを出すには、ファシリテーション力がものを言うことを強く実感しているので。きっといろいろ工夫しているんだろうなと思って観察しています。

北條:そうだったんですね。あまり意識せずにやっていました(笑)

満尾:チームの話でいうと、バックグランドが全く異なる、個性豊かなメンバーがそろっているのが特徴だなと思います。話し合うなかでも私の視点にはない意見やアイデアが出てきて「なるほど!そういう考え方もあるな」と発見が多くて。今「チームで働く」というのをすごく楽しめています。

八木:確かにみんなそれぞれ持ち味があって、いい感じに作用しています。満尾さんはこれまでも個人ユーザー向けのアプリを作ってきたから、画面のデザインなど改善アイデアをたくさん出してくれますよね。

――北條さんが今回の立ち上げでチャレンジングだと思うのは、どんなところでしょうか?

北條:産業保健領域で後発であるWorkをいかに他社サービスと差別化していくかという点です。すでに他社がやっていることを効率化するだけでは、あまり意味がありません。何が自分たちの強みなのか、このサービスは顧客にどんなベネフィットをもたらすのか。こうしたコアな部分は私が入社してまだ腹落ちしきれていなかった部分だったので、再度明確にすべきと思って、チーム内で議論してきました。

話し合っていくうちに、当初掲げていた「産業保健DX」の路線から、「メンタルヘルスの早期発見とそれに対するソリューション提供」という方向にまとまっていきました。

まずはストレスチェックやパルスサーベイのデータを通して、早期発見ができる仕組みを作る。そして発見後に何をしたらいいのか、次のアクションを提供できるようにする。たとえば、オンラインカウンセリングやパーソナルトレーニング、セミナー・ワークショップの開催などです。

f:id:jmdtecheditor:20220222125153p:plain:w500
北條さん

八木:このあたりはロングミーティングでしっかり議論しました。僕たちがやりたい健康促進は、単純に業務を効率化するDXをやれば実現できるのか?と原点に立ち返ると、社員の方たち(ユーザー)が手で触って使ってもらえるようにするのが本質だよね、と。こういう話し合いは、プロモーションにも大きく関係するので、今も議論を続けているし、まだまだ続けていくつもりです。

――サービスのコンセプトを再定義したのですね。実際、企業ではどんな課題感を持っているのでしょう?

北條:ストレスチェックから高ストレス者に産業医面談を実施するというフローは確立されているけれど、それ以外に出てくる社員の不調をなかなかキャッチアップできていないという課題を聞きます。 突然休職が出てしまったり、予想外に重症化してしまったケースなど、ストレスチェックだけではフォローしきれていない現状があるといいます。

そこでパルスサーベイについてお伝えするとポジティブな反応をいただくことが多いです。制度設計に導入して社員の変化が組織として分かるようにしたり、本人も客観的に現状を把握することで早めに周りに相談ができるようになれば、早期発見に活かせそうだと。

八木:人事労務の方たちは、やるべきことが多すぎて何から手をつけていいのか分からないと予想以上に業務負荷が高い印象を受けました。だから、優先順位を整理して、最適な手段を分かりやすく提示するのが僕らの役割になるのではないかと思っています。

前例がないから失うものもない。新規だからこその醍醐味

――プロジェクトは現在も進行中ですが、新規の立ち上げならではのおもしろさは何だと思いますか?

八木:セールスの立場からすると、JMDCではまだ誰もやったことのない新しい市場を開拓できることですかね。前例がないから失うものがないし、自分がやりたいことをアグレッシブにできる。「業界の非常識なことでも臆せずやっていこう」というスタンスが僕の持ち味だと思うので、それが発揮できるのが新規ならではですよね。

北條:JMDCでの新規事業が他社と違うのは、今まで培ってきたビッグデータを活かしたら何か新しいものが見えてくる可能性があるということだと思います。立ち上げ時に見えているわけではないのですが、お客様に確実にプラスになるものを提供するために、とことん突き詰めて考えたり、みんなで話し合いながらサービスを形作って届けていく。そのプロセスは新規事業だからこそ経験できることだと実感しています。

――満尾さんはヘルステックを希望して入社したとのことですが、実際にやってみてどんな発見がありましたか?

満尾:これまで健康診断やストレスチェックを社員として何気なく受けていたのですが、その意味合いは正直よく分かっていませんでした。いざサービス提供側になってイチから勉強して理解を深めていくと、自分たちの健康維持にとって本当に不可欠なものだと実感して。私個人としてもメンタルやストレスへのリテラシーが低いことに気付いたんです。 

だから企業の社員の方たちにも健康意識が高まるような、しっかり刺さるサービスを作っていきたいとより強く思うようになりました。

:私も利用者の健康に貢献できるのが、ヘルスケアサービス作りの醍醐味だと感じています。前職では、ECサイトで使うレコメンデーションを開発していましたが、このサービスの本質は、結局企業の売上を上げるものなんですよね。購買ユーザーにとって本当に良いかどうかは実のところ分かりません。一方で、今のPep Up for Workでは「本当にユーザーのためになるものを作っている」実感が持てています。

f:id:jmdtecheditor:20220222125405p:plain:w450
黄さん

私たちが考えるPep Up for Workの未来

――今後、Pep Up for Workをどんなサービスにしていきたいと考えていますか?

八木:誰でも知っているような知名度の高いサービスにしていきたいと思っています。それこそCMを流せるくらいがいいですね。CMには、広瀬姉妹のどちらかに出てもらえれば万々歳です。そして結果的にJMDCの株価も上がれば言うことなしでしょう。

北條:いいですね(笑)。僕は、Workを利用することで日常生活で自然と健康意識が芽生えるようになってもらえるといいなと考えています。たとえば、健診やストレスデータを身近に感じて、お弁当を買うときに原材料の表示ラベルをチェックするようになったり。他にも、ヘルスツーリズムに参加したり、公共交通機関を使うとPep Upポイントがたまるなど、使いたくなる仕掛けを増やしていけたらと思います。

満尾:それはおもしろいですね!私もユーザーの生活を豊かにするサービスに育てていきたい思いがあります。JMDCには「健康で豊かな人生をすべての人に」というスローガンがあるのですが、Workの場合は「健康で豊かな人生をすべての"働く人”に」を目指したいねと以前、黄さんが話していて、まさにそうだなと感じて。ストレス社会で働く人たちをサポートして、健康でいられる生活に貢献できたらと思います。

:私はPep Up for Workの「Work」が大きなポイントになっていると考えています。今はメンタルヘルスに注力していますが、「Work=仕事、働く」という視点で考えると、まだまだできることはたくさんある。妄想レベルですが、やりたいことがどんどん膨らんでいくんですよね。

Workだけではなく、Pep Upも然りです。人生100年時代と言われる中、Life(生活)とWork(仕事)はどちらも人生において切っても切れない重要な要素。そこには大きな可能性が広がっています。これからもその可能性を追求していきたいですね。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。
もし少しでも弊社にご興味をお持ちいただけましたら、こちらの採用ピッチ資料に詳しいことが記載してありますので、ぜひ一度ご覧ください。