プロダクト開発部の吉田です。JMDCでは医療ビッグデータを活かした事業を幅広く展開していますが、今回は私がシステム開発を担当している「らくらく健助」「個人通知」を紹介します。いずれも健康保険組合の保健事業を支援するプロダクトです。サービスの詳細や社会的意義、開発環境についてお伝えします。
<プロフィール>
吉田 博嗣(よしだ ひろつぐ)プロダクト開発部 保険者システムG
新卒でメーカー系のSIer会社に入社。その後、転職し医療データを扱うシステム開発を担当した後、2019年1月にJMDCへ入社。らくらく健助の開発に2年間携わり、医療機関向け分析サービスの開発を担当。2022年1月から再び「らくらく健助」「個人通知」のシステム開発を担い、要件定義などを行っている。
健康保険組合とは
「らくらく健助」と「個人通知」は、いずれも健康保険組合向けのサービスです。ということでサービスの紹介に入る前に、まずは健康保険組合について簡単に説明します。
国民皆保険制度に基づき一企業、もしくは複数企業が集まって形成しているのが健康保険組合です。社員とその家族を中心に、約3000万人が加入しており、社員とその勤務先から支払われる健康保険料をもとに、保険給付と保健事業を行っています。
保険給付とは、被保険者とその家族の皆さんが病気やケガをしたときの医療費の支払いや、出産・死亡・休職などのときに手当金を支給する仕事です。一方、保健事業とは加入者の病気予防や健康増進に関わる仕事で、この保健事業をJMDCがサポートしています。
健康保険組合が抱える課題は様々ありますが、なかでも大きいのが医療費の高騰化です。医療現場で叫ばれている「2025年問題」。高齢化に伴い、2025年には国家予算の80兆円が医療費と介護に消えてしまう、と言われているのです。
健康保険組合のPDCAサイクルをサポート
さて、ここからが本題。らくらく健助と個人通知について解説していきます。
いずれのプロダクトも健康保険組合のPDCAサイクルをサポートし、医療費の最適化につなげることが目的です。
■らくらく健助
らくらく健助は、保健事業を支援するWeb分析ツールです。現在、日本にある健康保険組合約1400のうち、250ほどの組合と契約しています。(2022年9月時点)レセプトと健康診断データをもとに分析し、ご契約いただいている健康保険組合に様々なデータを提供します。
たとえば、医療費の変化。らくらく健助では、健康保険組合加入者一人ひとりの医療費の増減が年単位や月単位で確認することができます。グラフで表示する機能があるため、一目で傾向を把握できます。他にも、健康診断の受診率を確認したり、血圧の数値データを他の健康保険組合のデータと比較したり、といった様々な使い方ができるのです。
らくらく健助は、保健事業におけるPDCAの「Plan」と「Check」で活用されます。健康診断の受診率データを見て、受診率が昨年より下がっていることが分かれば、健康保険組合は「健康診断受診率を上げる」というプランを立てられます。そして、プランに従って呼びかけを実施した後、どの程度受診率が上がったのかをチェックし、次のアクションへとつなげていくのです。
■個人通知(JLetter・JPost)
一方、PDCAサイクルの「Do」で活用されるサービスが通知サービスの個人通知です。通知物は「生活習慣病受診勧奨」「ジェネリック医薬品切替促進通知」「継続通院勧奨通知」など10種類。健康保険組合加入者の中から対象者を割り出し、自宅へ書類を郵送します。
らくらく健助の分析機能で、健康診断の受診率が低いことが分かり「健康診断受診率を上げる」というプランが策定された場合、個人通知の「健診受診勧奨通知」を利用し、健康診断を受けていない加入者へ呼びかけを実施することができます。現在通知物は10種類ですが、様々なニーズに対応し徐々に増やしていく予定です。
らくらく健助と個人通知をダブルで活用することで、健康保険組合の保健事業はより円滑に進みます。まずはらくらく健助でデータを分析し、プランを立てます。そのプランに基づき、個人通知で通知物を対象者に送付。健康診断の受診率が上がったり、生活習慣病になりそうな人が病院へ足を運んだりといった変化をもたらします。健康保険組合加入者の病気予防・健康増進に貢献し、結果的に医療費の適正化にもつながるのです。
モダンな開発環境を目指して
続いて、らくらく健助、個人通知の技術面について見ていきます。現在の技術スタックはレガシーですが、これからモダンな開発環境を目指していく方針です。
■モダンな開発環境への取り組み①:オンプレミスのクラウド化
具体的には、これまでオンプレで行ってきた構築をクラウドのAWSに変更する予定です。クラウド化することで拡張性が増し、ユーザー数増加に伴うデータ容量増加に対応し、機能開発がより簡単にできるようになります。
■モダンな開発環境への取り組み②:フロントエンドの技術変更
また、開発言語もより良い形を模索しています。フロントエンドはAnglarからReactへ変更を検討中。これはJMDCで取り扱うプロダクトの多くはReactを使用しているため、他のシステムと統一した方が融通が効きやすいという考えからです。
■モダンな開発環境への取り組み③:バックエンドの技術変更
バックエンドは現在C#を使用していますが、今後どの言語で開発するのがベストか検討していきます。このような技術的な課題に対して、一緒に考えていただける仲間を募集中です。
■らくらく健助の技術スタック
- バックエンド:C#
- フロントエンド:TypeScript, Angular
- データベース: Vertica, PostgreSQL
- BI:Tableau
- インフラ: オンプレミス(クラウドへの移行計画中)
- DevOps: Jenkins
- コード管理: GitHub
- コミュニケーション: Slack, GitHub Issue, Backlog, Confluence, G Suit
■個人通知の技術スタック
- バックエンド:Ruby On Rails、C#
- フロントエンド:Vue.js
- データベース: Vertica, PostgreSQL
- インフラ: オンプレミス
- DevOps: Jenkins
- コード管理: GitHub
- コミュニケーション: Slack, GitHub Issue, Backlog, Confluence, G Suite
■チーム紹介
開発チームは、リーダーを含めて計7人。直接開発を行うのは5人です。少人数の組織なので、フロントエンド・バックエンド両方に関わるメンバーが多いです。メインの担当は決めていますが、案件の状況によってはお互いをサポートするケースもあるため、フロントエンド・バックエンドの両方をやってみたい人にぜひチームに加わっていただきたいです。特にバックエンドはデータを扱うことが多いので、データ分析を楽しめる人は楽しく働けると思います。
ものづくりのポイントは「安全性」と「分かりやすさ」
ここからは、らくらく健助と個人通知のサービスの意義について説明します。
システム開発を担当する身として感じるのは、これらはとても社会的意義のあるプロダクトだということです。医療費の高騰、「2025年問題」の解決への糸口のひとつがデータ活用であり、それを体現するサービスがらくらく健助と個人通知です。社会課題に対して取り組めるのは、大きなやりがいにつながっています。
私がものづくりで意識しているのは、安全性と分かりやすさです。医療データはプライバシーの観点から、特に注意して扱わなければなりません。個人通知で、送付先を間違えることはあってはならないことです。だからこそ、安全性により一層注意して開発しています。
また、らくらく健助はシステムの特性上、あまり頻繁に使うサービスではありません。月に1回程度使用される健康保険組合が多いため、初めてでも分かりやすい直感的な操作で動くようにしたり、初期表示に使い方ガイドを置いておいたりといった工夫をしています。
最後に、将来像についてお伝えします。開発担当としての個人的な意見ですが、将来的にはプッシュ型のサービスにしてはどうか、と考えています。「医療費最近どう?」と聞いたら、自動でデータが出てくるとか。Alexaのようなイメージですね。システムに詳しくない健康保険組合の担当者でも利用しやすいサービスにしていきたいです。
最後までご覧いただきありがとうございました。
もし少しでも弊社にご興味をお持ちいただけましたら、こちらの採用ピッチ資料もぜひ一度ご覧ください。