グループ参画で広がる「ヘルスケアDX」の新しい世界とは

医療ビッグデータを活かした事業を幅広く展開しているJMDCは、多くのグループ会社を仲間に迎え、多様なグループアセットを活かした事業開発に取り組んでいます。2022年、新たにグループに参画したのが、医薬品の開発に欠かせないCRO(Contract Research Organization:医薬品開発業務受託機関)のアイメプロです。

「私たちが『治験デジタル化の旗手』となる可能性を秘める、稀有な企業になったのです」

同社の代表取締役社長である氏原工太郎氏は、JMDCグループ参画の意義をこう表現します。同氏と現場を担う臨床開発本部長の佐々木明人氏の2人に、自社のユニークネスである小児領域への想いやJMDC参画によるシナジー、現場の醍醐味について伺いました。

 



<プロフィール>
氏原 工太郎(うじはら こうたろう)株式会社アイメプロ 代表取締役社長 
大学卒業後、東京三菱銀行(現:三菱UFJ銀行)に入社、法人向け銀行業務に従事後、PEファンド丸の内キャピタルへ出向。その後、三菱東京UFJ銀行によるアユタヤ銀行買収プロジェクトに携わった後、アユタヤ銀行に出向、PMIに従事。2018年よりJMDCグループに参画。社長室長、およびグループ投資責任者(JMDCキャピタル取締役)として、上場準備、M&Aを推進後、2022年11月より現職。

 

社会のために「なくなってはならない領域」を守るCRO

──アイメプロは、小児医療に特化したCROです。近年の医薬品開発におけるCROのニーズの動きをどのように捉えていますか。

氏原:圧倒的にユーザーの多い大型新薬「ブロックバスター」はすでに開発が一巡し、医薬品開発のトレンドがオンコロジーやUMNs(アンメットメディカルニーズ)の領域に移行したことにより開発難易度が上昇し、開発コストの増加や期間延長が生じているという課題に対する解決方法として、CRO各社は臨床試験の効率化を模索している状況です。その具体的な方法論として、DCT(Decentralized Clinical Trial:分散型臨床試験)などの分散化、リアルワールドデータ(以下RWD)をコントロールアーム(control arm:対象群)に活用、リスクベースドモニタリング(RBM)によるSDV (Sourse Data/Document Verification:原資料の直接閲覧あるいは原資料との照合・検証)の削減などがあります。

ただ、人の生命に直結する医療現場の協力があって成り立つ治験において、新しい治験システムの浸透には時間がかかります。加えて、ヘルスケアにおけるRWDの集積・利活用に長けたプレイヤーが同業界に橋頭堡を築けていなかった背景もあって、データ活用の可能性については、この10年ほど続き、今なお大きな課題となっています。

 

──トレンドが移り変わるCROのなかでも、アイメプロは小児医療に専門性を持っています。

氏原:小児医療への貢献は、私たちのビジネスの原点です。子どもたちは成長が早く、薬の開発に不可欠な治験が難しい。半年〜1年ほどで体が変化すれば、薬の効果にも影響するので、必要なデータを取得する難易度が伴います。

他方、市場規模が大きくはなく、ビジネスとしての旨味はそれほど多くありません。そのため、医薬品開発の中でも置き去りにされやすい領域と言えます。そこに課題感、社会的使命を感じて創業されたのが我々アイメプロになります。

今もなお、小児領域への取組により創業された弊社には、社会の求めているものにしっかりと耳を傾け、商業主義に走りすぎることなくそれに率先して応えるという精神が流れ続けています。現在では、その精神の延長線上として、小児領域に留まらず成人向け医薬品開発にも積極的に取り組んでおり、また社会課題として課題感が残されている治験DXへの取組も強化しています。

 

医薬品開発における「デジタル化の旗手」を目指して

──アイメプロは2022年、JMDCグループに参画しました。その狙いを教えてください。

氏原:この先、どのように医薬品・医療機器の開発における社会課題に応えていくかを考えると、やはりデータ活用は不可欠です。

「医療と社会に貢献する」という想いを持って創業し、その思いを理解する人たちが集まって、現在のアイメプロがあります。ただ、アイメプロ独自の力では、アプローチできることは限られてしまう。

そこへ声をかけたのがJMDCです。JMDCは、「データとICTの力で、 持続可能なヘルスケアシステムを実現する」ことをミッションとしており、そのグループにはヘルスケアに関する様々なデータやサービスを有する企業が集まっています。さらに、JMDCはRWDを活用した新たな治験の在り方を模索していました。

そこで、アイメプロがJMDCグループに参画すれば、データを活用した新しい臨床試験の事業構想を描くことが可能となり、それを現場に共有することで変革が起きるのではと感じ、グループインして頂くべく、私から強くアプローチさせていただきました

 

▲JMDCグループのRWDビジネスの展望

 

──JMDCグループの参画に、現時点でどのような手応えを感じていますか。

氏原:実際に一部の現場では、さっそくデータ活用が進んでいます。

たとえば、JMDCが持つ薬の用法の実態データを、クライアントの治験計画に活かしていただいています。また、施設選定においてもデータ連携に可能性を感じています。例えば、治験で被験者の組み入れが進んでない施設では、周辺エリアで同じ病気の患者さんを抱える医療施設のデータを使って、より効率的な組み入れを目指す試みも始まっています。

現在連携しているデータは、JMDCのレセプトデータが中心ですが、今後はより現場に近い検査値を含む電子カルテ由来のデータを持つグループ企業や、治験に関わるデジタルツールを手掛けるグループ企業との連携を深めていけたらと考えています。

治験プロセスの効率化やデジタル化は、もはや医療業界全体のニーズ。しかし、対応できるプレイヤーは限られます。私たちのように、CROとしてRWDやデジタルツールを取り揃えられる企業は稀有な存在です。

アイメプロは高まり続けるデジタル化のニーズに対して、JMDCのグループアセットを活用できる状態にあり、なおかつ、アプローチ可能な顧客がいる。そのいずれも揃っているという意味で、長らく変わらなかった臨床開発のプロセスを高度化させ、「治験デジタル化の旗手」となるポテンシャルを十分に秘めていると言えるのではないでしょうか。

来るべきニューノーマルに対応できるCROのリーディングカンパニーになることが、我々の確固たるビジョンです。今後、業界では間違いなくデジタル化が進むなかで、それを実現できるポジションにあるのは、アイメプロならでは。ビジョンに向かって着実に進んでいくのみです。

 

提案から実行まで。幅広い開発経験が積める環境

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インタビュー後半は、アイメプロで臨床開発本部の本部長を務める佐々木明人さんに、現場のやりがいやチームの雰囲気を聞きました。

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<プロフィール>
佐々木 明人(ささき あきひと)株式会社アイメプロ 臨床開発本部 本部長
埼玉県出身。大学卒業後、外資系製薬企業の臨床開発部に入社。以後、製薬企業で20年、CROで12年と、計32年間にわたり医薬品開発業務に従事。多数の疾患領域での医薬品開発経験があり、自身が開発業務に携わった医薬品も多数上市される。アイメプロには2020年7月に入社。

 

──氏原代表のお話にあったデジタル化について、現場でもニーズを感じていますか。

佐々木:現場でもニーズを感じています。氏原さんからもお話しがあったようにJMDCのグループアセットを活用した提案は、効率化やコスト削減に繋がるためクライアントからの期待も非常に高い印象です。

また窓口を一本化できることも好まれていますね。例えば、データを活用することになると複数のベンダーを組み合わせることが一般的ですが、JMDCグループとして全てをマネジメントできるため結果的に窓口が一本になります。これは弊社ならではの強いポイントではないでしょうか。

このような動きをしながら、将来的にはEDC、e-Consent、e-PRO、DDC、EHR Captureなどのデータツールを提供して、臨床開発現場での案件をコーディネートしていきたいと思っています。

また採用面接でも、アイメプロがJMDCグループに参画したことについて、ご質問をいただくことが増えて、デジタル化に対して注目されていると実感しています。

 

──大手CROも存在する製薬業界で、アイメプロならではの強みとは何でしょうか。

佐々木:私たちの強みは、一つのプロジェクトを提案から受注後の業務終了まで同じ担当者がコミットできる体制にしていることです。アイメプロでは、一人の担当プロジェクト数を1つと決めています。この体制にすることで、担当者が責任を持って最後までコミットすることができ、結果的にクライアントの高い満足度と信頼を獲得できています。

業界的に珍しいかもしれませんが、アイメプロではより案件の成功角度を高めるために、この体制を取っています。

また、この体制に共感し「腰を据えてプロジェクトを担当したい」という思いを持って、外資の大手CROから転職してきたメンバーも少なくありません。

 

──一つひとつのプロジェクトでしっかり成果を出すための体制を取っているのですね。アイメプロでは、どのようなクライアントが多いのでしょうか。

佐々木:多くのメガファーマで、大手CROとプリファード契約や特定の業務毎のFSP(Functional Service Provider)契約を結んでいますので、アイメプロのクライアントは、必然的に中規模のメーカーやベンチャー企業が中心になります。中規模のメーカーやベンチャーでは、業務委託先のCROをコンペで決定することが多いのですが、大手CRO相手に案件を獲得することは簡単ではありません。

アイメプロで開発業務を支援させていただく企業は、メガファーマに比べて新薬の開発経験が少ない傾向にあります。なかには、20年近く新薬開発をしていなかったようなケースもあって、開発計画の立案業務手順書の整備といったゼロベースからお任せいただくこともあります。このように、CROでも製薬会社が担うような業務に携われそこから生まれる自社のノウハウをフルに活用し、クライアントに対してさらなる企画提案をさせていただいている点も、アイメプロの独自性につながっていると思います。

 

──佐々木さんのいる臨床開発本部は、どのようなチームなのでしょうか。

佐々木:臨床開発部とメディカルライティング部に分かれており、CRA(臨床開発モニター)とQC(品質管理)合わせて40人ほどのチームです。社内で最も社員数が多く、CRA担当者は30〜40代が中心です。コンサルティング業務の多くも、臨床開発本部の経験豊富な社員で対応しています。

もしかすると、モニタリング業務を専門としてキャリアを積んできた方は、コンサルティング業務を含め提案力が求められる現場にフィットするか心配かもしれませんが、経験を積めば大丈夫です。だからこそ採用では、専門性以上に向上心、柔軟性、コミュニケーションスキルや協調性を重視しています。

臨床開発部には、全員一丸となって考え、その結果としての成功を喜び合う風土があります。チームで動く仕事が好きな方にはぴったりな環境だと思います。特に協調性が求められるのが臨床試験の現場です。社内の様々な部門、職種の方たちと進捗状況や問題点を共有し合い、同じゴールに向かって協力し合うことが大切です。

モニタリング業務では、1つのプロジェクトに複数のCRAがアサインされ、それぞれが個の考え方のもとにおいて対応する、という一貫性のない状態が規制当局やクライアントが最も嫌う状況です。

そうしたことを避けるために、SOP(標準業務手順書)、モニタリング計画書、詳細なQ&A集などがあるわけですが、疑義は必ず出てくるものです。常に「これを読めば、誰でも同じやり方で対応できるか」をチーム内で話し合い、内容をブラッシュアップしていく姿勢も大切にしています。

 

人材に真摯に向き合い、一緒に成長していける会社

──佐々木さんはこれまで、製薬業界で7社を経験されています。アイメプロに入社を決めた理由を教えてください。

佐々木:一言で言えば、当時社長だった梅田さん(現・取締役会長)の人柄と社風に惹かれました。

前職のCROには9年ほど在籍していたのですが、徐々に体制や事業の方向性が変わって、やりたこととのギャップが生まれてたんです。そこで交流あった以前の同僚に「いろいろ経験をさせてもらえる成長過程のCROはないだろうか」と相談したところ、「ちょっとうちの社長に会ってみませんか」と声をかけられたのがアイメプロでした。

当時はまだ社名を聞いたこともありませんでしたね。創業者の梅田さんと話をして、人を大切にする姿勢と、ビジネス的な側面にとどまらない小児医療にかける想いを知りました。印象的だったのが「すべての問題は人と人との関係性で解決できる。技術は後からついてくる。誰1人脱落者を出さない」という言葉です。社長の立場でこれほどの熱意を口にするのが非常に新鮮で、こんな会社で働いてみたいと想いました。

 

──これまで様々な企業で働かれてきた佐々木さんが思うアイメプロで働く魅力についても教えていただけますでしょうか。

佐々木:社員一人ひとりを大事にしていて、市場価値の高い人材になれる環境があることではないでしょうか。わたしの転職理由でもある「いろいろな経験をさせてもらえるCRO」にも繋がりますが、アイメプロの案件には「深さ」と「広さ」があり、社員一人ひとりのできることが増えていく環境があります。

ここでの「深さ」とは、案件に一気通貫で関われることを指します。先ほどもお話しした通り、20年近く新薬開発をしてこなかったクライアントからゼロベースでお任せいただくことも少なくありません。そのため、医薬品の開発に一気通貫で携わる機会も多いんです。アイメプロは一人の担当プロジェクト数が一つという体制でクライアント支援をして成果を出しているため、初期の開発フェーズで関わった案件から、第二フェーズ、第三フェーズとお任せいただくことが多いんですね。そのため、結果的に案件に深く関わることができます。

続いて「広さ」ですが、業務の幅を指します。アイメプロでは、例えばモニタリング担当の場合は、モニタリング業務を軸に本人の志向性に合わせて他のこともお願いする環境があります。目指すキャリアに合わせて、開発のプランニングやマネジメントなどの機会も作りながら本人のキャリアに寄り添う体制を準備しています。

定期的に1on1を実施しているので、そのタイミングでキャリアについても会話をしながら、各社員の市場価値を高められるようにしているのです。

 

──社員一人ひとりを大事にする環境なのは魅力的ですね。佐々木さんのアイメプロでのやりがいについても教えてください。

佐々木:製薬企業、CRO共通のことで言えば、やはり自分が開発にかかわった薬が患者さんや社会の役に立つことですね。

自分が開発にかかわったいくつかの薬は、現在、治療で使用されてます。自分自身や家族、知人に使用されることもあります。また、患者さんのカルテや看護記録の記載情報を通じて、実際に患者さんの病気が治癒していたり、QOLが上がっていたり、患者さんやそのご家族の喜びの声を見聞きするのは励みになります。

もう一つは、社員の成長支援ですね。個々人の中長期的なあるべき姿を見据えて、開発に関わるスキルアップやマネジメント業務といった成長機会も提案する。これは一人ひとりを見ることができる会社規模だからこそです。いつか「アイメプロ出身の方は優秀だよね」といわれる会社になれたら、これほど嬉しいことはありませんね。

最後に、アイメプロはまだまだ成長過程の会社であるため、会社の将来について多岐にわたって関われることもやりがいに感じています。

 

──マネージャーの立場で、日頃心がけていることは何でしょうか。

佐々木:上長と社員との信頼関係が最も重要だと考えています。信頼関係構築のためにも、社員の不安や不満を早期に知るためにも、日々のコミュニケーションはとても重要だと思います。そのため、臨床開発本部では、業務を通じてのコミュニケーションとは別に、然るべきタイミングで、定期的に1on1を行うことにしています。忙しい時期は数カ月に1回になってしまって仕方ないと思っていますが、機械的に行うのではなく、時間ありきではなく、きちんと話をするようにしています。

人と人とのつながりを大切にする社風に共感して、アイメプロへの入社を決めたからこそ、社員にも常々「人とのつながりを大事にしなさい」と伝えています。私は学校の先生になりたかったタイプですただ、みんなには「佐々木さんの『ちょっといい?』は30分とか、1時間ですよね」とよく言われます(笑)。

 

佐々木さんの1on1の風景

 

綺麗事に聞こえるかもしれませんが、アイメプロは社員一人ひとりのキャリアを大切にして、人材を育てる会社です。また、CROは人材がすべてです。会社自体もまだまだ成長過程のため、自分のやりたいことを会社の成長につなげていきたい人にとっては、非常にやりがいのある会社と思います。

そして、デジタル化にも取り組んでいるので、CROのニューノーマルを切り拓きたい方には面白い環境だと思います。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。
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