保険、病院、自治体のプロジェクトから学んだヘルスビッグデータの面白さ

JMDCはヘルスケア分野における社会課題を解決するため、さまざまな取り組みをおこなっています。保有するレセプトデータを用いた傷病予測モデルや、健康状態を見える化し行動変容を促進する「Pep Up(ペップアップ)」など、ヘルスビッグデータを活用したソリューション開発もその1つです。今回は、データサイエンス部の部長を務める金澤さんに、JMDCのデータサイエンティストとしての仕事の面白さや、目指す組織像についてお話を伺いました。

 

<プロフィール>
金澤 大樹(かなざわ だいき)株式会社JMDC インシュアランス本部 データサイエンス部 部長 ・アクチュアリー
京都大学理学部卒業後、同大学院進学。卒業後、ハートフォード生命保険株式会社(現オリックス生命)に入社し、決算業務に従事。その後、メディケア生命保険株式会社にて、主に商品開発、金融庁折衝に携わったのち、2016年にJMDCに入社。保険会社向けの商品開発や、健康保険組合向けデータ分析、予測モデル開発を担当。2021年より現職。

 

アクチュアリーからデータサイエンティストの道へ

――はじめに、金澤さんのご経歴について教えてください。

アクチュアリーとして、新卒でハートフォード生命保険(現オリックス生命)に入社し、約4年間責任準備金の計算等の決算に関する仕事をしていました。その後、同じくアクチュアリーとしてメディケア生命保険に転職し、商品開発の仕事をしていました。

新卒で保険会社を志したきっかけは、大学時代にあります。生命保険講座を受講し、そこでアクチュアリーの基礎を学んだのが始まりでした。数学を実社会で活用することができるという魅力が、私をこの道に引き込んだのです。

データを深く掘り下げ、その背後にある「なぜ」という疑問に答えを見つけることが、私にとっての喜びであり、数値やデータに隠されたストーリーを解明し、それをビジネスに繋げることが保険業界で働く醍醐味でした。

 

――その後、保険会社から別業界のJMDCに転職した理由を教えてください。

そもそもJMDCを知ったきっかけは、アクチュアリーとして商品開発の仕事をした際に、JMDCのデータを活用して保険料の基礎率を算定したことです。そのときにはじめてJMDCのデータに触れ、非常に興味深く感じました。

その後「より多くの商品開発をしたい」と考えるようになり、もし同業界の中で転職をしても1社で開発できる商品数には限りがあると考え、それであればJMDCのようなデータプロバイダとして働くほうが、多くの商品開発に関われるのではないかと期待し、2016年に入社しました。

 

――金澤さんは現在、データサイエンス部の部長をされています。データサイエンス部のチーム構成について教えてください。

データサイエンス部は2年前にできた部署で、2つのグループから構成されています。1つが解析グループ、もう1つがデータサイエンスグループです。解析グループには4名が所属しており、システム開発を経験している方が多く在籍しています。SQLを駆使して、当社のヘルスビッグデータからお客様の仕様書に基づいてデータを抽出する役割です。

データサイエンスグループには9名が所属しており、8名がアクチュアリー出身です。お客様のやりたいことが固まっていない状態からのサポートや、機械学習・統計モデルを使っていきたいときに全面的にサポートする役割です。

 

JMDCではヘルスビッグデータを色々な観点から自由に分析できる面白さがある

――金澤さんが入社してから携わってきたプロジェクトについて教えてください。入社直後はどのようなプロジェクトに関わってきたのでしょうか。

入社した2016年当時は、社内にまだデータサイエンティストとしての役割が明確にあったわけではありませんでした。コンサルティング部門のなかの分析担当として入社し、多くの保険会社との商品開発に関するプロジェクトに携わっていました。当時からデータ分析の需要が高く、分析量が多かったため、毎日データと向き合いながら過ごしたり、時にはコンサルタントに同行してデータの使い方をお伝えさせていただくこともありました。

私自身も前職で商品開発に携わっていたからこそ強く感じるのですが、保険商品の企画・開発は、各社が独自性と創造力等の知恵を結集している部分です。関係者も多く、商品をリリースするまでは、大変険しい道のりです。だからこそ、JMDCのデータを商品開発に役立てていただけるのであれば、ぜひサポートさせていただきたいと思いますし、JMDCのデータを価値あるものとして頼ってもらえることは大変嬉しくもあり、面白い部分だなと思っています。

 

――前職では保険会社のアクチュアリーとして働き、JMDCではデータサイエンティストとして働いてきました。仕事の違いやデータサイエンティストの仕事の面白さについて教えてください。

保険会社でJMDCデータを使うとしても、データの利用目的は限られていますし、当たり前ですが保険会社に勤めていた頃は他の保険会社の情報に触れる機会はありませんでした。しかしJMDCに転職してからはヘルスビッグデータを分析・解析できる環境のため、第三者として多様なデータと接する機会に恵まれたと感じています。

またアクチュアリーとデータサイエンティスト、これらはどちらも専門職ですが、業務の内容と範囲に大きな違いがあります。

保険会社でのアクチュアリーは、その役割と業務がはっきりと定められています。例えば決算に関わる部門では、必要な数値を計算して決算をサポート。商品開発の部門では、保険料を算出する数値の計算を担当します。それぞれの部門で、特定の業務を遂行するのが一般的です。

一方でJMDCのデータサイエンティストは、業務領域が固定されていません。もちろん数学的な知識とスキルが求められますが、それだけでなく多様な業務に柔軟に対応する能力も必要です。

JMDCのデータサイエンティストの面白さは、ヘルスビッグデータを扱う点にあります。データの量は膨大で、全てを把握することは不可能に近いです。しかし自分の専門領域にフォーカスして、深く分析を進めることができるのです。この自由度と探究の幅広さは、データを扱うプロフェッショナルにとって、大きな魅力と言えるでしょう。

 

――その後はどのようなプロジェクトに関わってきたのか教えてください。

部門を超えて、病院や自治体とのプロジェクトにも携わる機会もありました。病院のプロジェクトでは、データ分析の対象が患者、自治体の場合は住民となり、個々のケースに深く関わることが多く、保険会社の分析とはまた異なる発見と学びがありました。

例えば保険会社とのプロジェクトでは、分析結果はより統計データに近いものになりますし、商品開発に活かすという目的もあり、分析結果が事実としてそのまま受け入れられることが多いです。しかし病院や自治体とのプロジェクトでは、"彼ら"のデータを分析しているということもあり、分析の結果に対して「なぜこの数値になるのか?」という質問を頻繁に受けました。それは、彼らが自分たちの組織が持つ特性を理解しており、分析結果に対しても深い関心を持ち、彼らなりの基準で評価するからです。

病院とのプロジェクトで特に印象的だったのは、各病院で患者層に違いがあるということです。考えてみれば当たり前のことではあるのですが、ヘルスビッグデータ全体を分析していた時にはそこまで強く感じていなかった部分でした。例えば同じレセプトデータでも、病院ごとに見ると「この病院は糖尿病患者が多い」「同じ疾患でも入院日数が異なる」というような特徴がはっきりと見えるのです。これは、一つひとつの病院のデータを個別に分析することで初めて気が付くことでした。

また自治体とのプロジェクトも、新たな視点をもたらしてくれました。自治体は医療費の高騰や特定の疾患の増加といった問題に対して、自分事としての強い危機感を持ってデータを分析していました。そのため、データに表れる事実だけでなく「なぜそうなるのか」という背景を深く掘り下げるアプローチを取っていました。

これらの経験が、私のデータ分析に深みと広がりをもたらしてくれました。それは、単にデータを分析し結果を示すだけでなく、その背後にあるストーリーを探求し、解明する重要性を教えてくれました。このアプローチは、保険会社とのプロジェクトにおいても、分析結果の説得力を一層高め、プロジェクトの質を向上させています。

 

データサイエンティストの仕事は一直線では終わらない

――さまざまなプロジェクトを経て、現在は組織をマネジメントする立場としてご活躍されています。金澤さんが目指す組織像を教えてください。

ヘルスケアデータを扱う分析者として、基本的なスキルを持つことはもちろん、それぞれが自身の強みを持ち、それを最大限に活かせる組織を目指しています。例えば、各メンバーの強みを活かせるプロジェクトにアサインをしたり、興味を持つ分野で提案してくれたアイデアをもとにディスカッションを繰り返すなどです。個性を伸ばしながら、組織の底上げにも繋がるマネジメントを意識しています。

また、新たなメンバーには、主にOJT(On the Job Training)を通じて、実際にクライアントと接しながら実践的な知識と経験を身につけていただきますが、OJTだけでは十分ではないと考えています。

そこで入社後すぐに、私からヘルスケアデータに関連する知識をインプットするセッションを設けたり、部内勉強会も定期的に開催しています。

とはいえ、教育カリキュラムはまだ発展途上の部分もあると感じているので、これからも整えていきたいところです。

 

――データサイエンス部として今後チャレンジしていきたいことや、金澤さんご自身が今後チャレンジしていきたいことを教えてください。

JMDCの強みは、レセプトデータと医療機関データの圧倒的な保有量です。そして最近では、ウェアラブルデバイスから得られるデータの扱いも増えてきています。データの種類は、今後も増え続けるでしょう。そのため、データサイエンス部として、これら多様なデータを活用して価値を提供することが大きなミッションです。

今後の方針として、当社が得意とする業界を超えて、新たな分野にも進出できないかと考えています。例えば、トラックやバスの運転手の方々が、長時間の労働や過労で居眠りやてんかん発作を起こしてしまうリスクがあります。当社のデータを活用して、このようなリスクを事前に予防できる手段を提供できれば、さらに社会貢献につながると思っています。

私個人としては、幸いなことに、特に直近2年は新しいメンバーにジョインいただく機会が多く、育成に多くの時間を投資してきました。今後はより一層、これまでの経験と知識を活かしてデータ活用をさらに推進し、企業の価値向上に貢献したいと考えています。

また私自身、もともとデータ分析の専門家として入社したため、売上貢献に直接的な責務は少なかったのですが、現在はデータサイエンス部の部長として、売上にも責任を持つ立場にあります。これは、私にとって新たなチャレンジでもあり、責務だと考えています。

 

――今後入社するメンバーに期待することを教えてください。

現在のメンバーも含め、データに対する深い興味と好奇心をもった人材を求めています。データの魅力に取り憑かれ、「データって面白いよね」と感じられる方々と一緒に働きたいと考えています。その理由はシンプルで、興味と好奇心があるからこそ、自発的にデータを探求し、新たな価値を創造する力が生まれるからです。

データサイエンティストの役割は、単純ではありません。仮説を立て、データを解析し、その結果に基づいてさらに深掘りを進め、解決策を導き出すという繰り返しです。このプロセスの原動力には、データに対する興味と追求心・好奇心が不可欠です。

今後入社するメンバーに期待することとしては、主体的に動き、積極的にチャレンジしていく姿勢です。もちろん、初めての環境で未知のことも多いため、チームメンバーからのサポートや助言を必要とすることが多いと思います。しかしそれ以上に、自ら積極的に学び成長し、チーム全体を引き上げる存在になってほしいと願っています。私たちのチームは、単に助け合う集団ではなく、「共に学び、共に成長する」チームです。その精神に共鳴し、一緒にデータの世界を探求し、新たな価値を創造していく仲間を心待ちにしています。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。
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