300万ユーザーのヘルスケアサービス「Pep Up」 立ち上げからグロースまでの2000日

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JMDCが手がけるヘルスケアプラットフォーム「Pep Up(ペップアップ)」は、2016年に健康保険組合向けに提供をスタートし、2021年9月にユーザーID発行数が300万件を突破しました。

Pep Upは「JMDCの医療データを活用して、個人向けのWebサービスを作る」構想をもとに、JMDCの子会社Health Data Platform(以下、HDP、2018年JMDCに吸収合併)が立ち上がったところから始まります。

今回、HDPの時代からグロースまで6年近くPepUpの成長を支えてきた大山、中井、羅の3名に、Pep Upの“0→100”を振り返ってもらいながら、試行錯誤してきたプロセスやプロダクトを伸ばせた理由について聞きました。

<プロフィール>
大山 亮介(以下、大山)企画、PdM
サイバードに新卒入社し、携帯向けコンテンツ企画、スマホアプリ企画等を担当した後、GREEにジョインし、グローバルプラットフォームのプロジェクトに参画。その後、Kaizen PlatformにてBtoBのWebマーケティングプロダクトに携わる。2015年、HDPに入社しPep Upの企画を手がける。2021年4月よりプロダクトインキュベーション室の室長として、新規サービス企画やプロダクトマネジメントを行う。

中井 彦一郎(以下、中井) エンジニア
大学院在学中に起業し自社サービスや受託開発の開発リードを3年ほど経験した後、GREEにジョイン。SNSやプラットフォーム事業にて、マネージャーとして新規API開発の推進、アプリ開発基盤のマネジメントや新卒エンジニア教育を経験。その後、スタートアップ数社で新サービス開発に従事。2015年、HDPに入社しPep Upの開発を担当。JMDCに合併後はPep UpのEngneering Managerとして開発を率いる。2021年8月よりプロダクトインキュベーション室で新規開発に従事。 

羅 熹(以下、ルーシー) エンジニア
中国の開発会社で日本向け業務システムを担当した後、日本のWebサービス開発会社やゲーム会社などベンチャー数社を経験。その後、サイバードでスマホアプリ開発に従事。GREEに転職し、大規模ゲームの開発や組織作りを担う。2015年、HDPに入社しPep Upの開発担当に。2021年8月よりプロダクトインキュベーション室に異動し、企業向け新規サービスの開発に励む。

医療ビッグデータを個人に還元するWebサービス

ーーPep Upは、どんなサービスなのでしょうか?

大山:Pep Upは、2016年2月にスタートしたPHRサービスです。PHRサービスとは、Personal Health Recordの頭文字を取ったもので、個人の健康や医療データを一元管理して、健康を促進する活動につなげてもらうWebサービスのこと。

Pep Upでは、JMDCが蓄積してきた膨大な医療データの分析に基づいて一人ひとりのユーザーに合わせた個別アドバイスや疾病リスクを表示しているのが特徴です。

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また、健康管理に必要な日々の運動や生活習慣記録ツールとしての役割もあります。定期的な運動を促すイベントやアクティビティ、ユーザーの状態に合わせたレシピや記事を通して、無理なくステップアップできるようなソリューションを提供しています。

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 ▲歩数、体重、睡眠時間、血圧などを記録    ▲個人の健康状態に合わせたレシピが参照できる

中井:Pep Upは、健康保険組合(以下、健保)に提供し、健保加入者がユーザーとして利用するBtoBtoCのビジネスモデルです。長年、レセプト(診療報酬明細書)をクレンジングしたデータを事業者に提供するBtoBビジネスを主力してきたJMDCにとって、初となる個人向けWebサービスとして開発されました。

エンタメ系Webサービスで培った“ユーザー視点”を追求

ーーJMDCの子会社としてHDPが立ち上がった経緯と、HDPに参画した理由を教えてください。

大山:HDP創業のきっかけは、JMDCが長年蓄積してきた医療ビッグデータを活用して新しいWebサービスを作れないかと、木村会長(当時)が打診したことにあります。

JMDCは、2002年の創業時から医療データ事業で実績を積んできた会社で、個人向けのWebサービスの開発経験はありませんでした。そこで、データを活用したヘルスケアサービスを作る子会社として、2015年にHDPが立ち上がりました。

当時のHDPの代表はJMDC出身の方なのですが、GREE時代の私の同僚でもあったんです。そのご縁から「こんな事業を始めるから、一緒にやらないか」と声がかかりました。

それまでは、スマホアプリやソーシャルゲームなど様々なサービス企画に関わり、自分の手で大きなヒットを生み出す経験もできて、その面白さを十分に味わってきました。ただ、これらは流行り廃りの波が大きく、ピークを超えると一気に下火になる傾向があって。「本当に強いビジネスとは何なんだろう」と考えるようになったんです。

そんな折、HDPのヘルスケアサービスの構想を聞いて「健康という誰にとっても揺るがない価値のあるもの」にビジネスとしての将来性を感じました。Webサービス業界で培った企画力を、今度は「社会になくてはならない継続性のあるビジネス」に活かしていきたいと思ったんです。

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プロダクトマネージャー:大山さん

中井:僕とルーシーさんは大山さんに声をかけてもらって、HDPにジョインしました。大山さんはGREE時代に同じプロダクトを作ったことがある仲。話を聞いたとき、ゼロイチのフェーズ、しかも経験のなかったヘルスケア領域ということで、素直に面白そうだなと思いましたね。当時、人を健康にするプロダクトの開発や、医療費増大の社会課題にも興味があったんです。

ルーシー:僕はこれまで大山さんと一緒にアプリをゼロから作った経験がありました。また、中井さんとは開発や組織作りについての考え方がとても似ていたこともあり、この二人と一緒に未知のヘルスケア業界でサービスを立ち上げていきたいと考えたんです。

大山:中井さんとルーシーさんを誘ったのは、リードとして開発初期に必要な役割をしっかりこなせる優秀なエンジニアだからです。他にも、デザインはサイバード時代の上司に依頼しました。彼は当時、フィリピンで働いていたので、フィリピンまで飛んでお願いしに行ったんです。サービスの立ち上げメンバーは重要だから、「この人以外にはいない」と思える人を集めたくて。

ーー初期フェーズでは、どんなことに取り組みましたか?

大山:私は企画を担当し、構想を企画書に落とし込んでいました。当時作った企画書を振り返っても、今のPep Upの本質とほぼ相違ないと感じます。
捉え方を変えると、ヘルステック領域のPHRサービスにおいて「やるべきこと」や「サービスコンセプト」は誰が企画しても大きく大差はないものだと思います。

ただ、当時は健康というと年配者が意識すべきもので、企業の従業員である健保加入者の年代が真剣に捉える風潮はマイノリティのように感じていました。そのため「健康」に価値を感じてもらい、サービスを利用してもらうための企画をするのが本当に難しい課題でした。

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▲当時作った企画書の一部

中井:私は開発基盤の構築を進めていました。入社したときには、AWSとJMDCのDWHのサーバーをつなぐダイレクトコネクトが導入されていたので、JMDCのデータ基盤をどのように引っ張ってくるかいろいろ試していましたね。

ルーシー:同時並行で、サービスのコンテンツ作りにも取り掛かりましたが、データをどう見せるかに試行錯誤しました。特に、健康診断データの画面表示では5~6回ワイヤーフレームを考え直したりと結構苦戦して。

当時は、健診の検査値を表組で表示するのが主流でしたが、専門的な数値が並んでいるだけでは何が問題なのかつかみづらく、健康に対する意識が高まりにくいだろうと想像したんです。

そこでJMDCが蓄積してきた過去10年分の健康診断のデータを使って、健康状態の変遷を示したり、5年後、10年後の疾病リスクの予測を出したりする見せ方を考案しました。

大山:JMDCの医療ビッグデータの活用でいえば、健診データの他にも「健康年齢」という独自指標を取り入れられたのが良かったと思います。「健康年齢」とは、健診データをもとに1年後の医療費を予測し、その医療費が何歳相当なのかを算出している指標。「年齢」や「医療費」という分かりやすい数値に変換されることで、自身の健康に興味を持つ取っ掛かりになっているんです。

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▲「健康年齢」と「医療費予測」が健康に興味を持ってもらう入口に

ーー導入はスムーズに決まったのでしょうか?

中井:健康保険組合にプロトタイプを見てもらいましたが、そこで意見をもらううちに分かったのが煩雑で工数がかかる健保業務に深い課題を感じているということでした。そこでまずは健保さんの業務改善につながる機能を作って、導入のハードルを下げようと考えたんです。

具体的には、医療費通知という加入者に紙で送付していた通知業務をWebで簡単にできる機能を開発しました。これはとても喜ばれて、Pep Up導入のキラーコンテンツに。「健保のDX」に目を向けたところから、徐々に他の機能を追加していきました。

大山:Pep Upは、PHRサービスの中でも後発組で「今さら始めても意味があるの?」と思われていたくらいだったんです。だから初期フェーズでは、圧倒的に健保側に寄り添って、他の企業がやらないレベルでニーズに対応する必要があった。私たちも健保領域について何も知見がなかったため、健保さんの業務を見させてもらっては、何に困っているのかを聞いて、一緒にサービスを作る意識でやっていました。

ーー健保の業務効率化に対応しつつ、個人ユーザー向けの機能も拡充させていったのですか?

ルーシー:はい。今もPep Upの人気コンテンツであるウォーキングラリーはそのひとつです。目標歩数を設定して、その目標を達成できたらポイントがもらえる仕組みで、個人でもできるし、チームを組んで対抗戦もできます。

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大山:ウォーキングラリーの目標歩数を達成できたらクジが引けるのですが、これはGREEの毎日クジという圧倒的なアクセス数があった人気サービスからヒントを得ているんです。「クジを引きたい」というユーザー心理を理解していたからこそ、応用できたといえるでしょう。

中井:ポイントが溜まると、ヘルスケア関係の景品と交換できるという継続して取り組みたくなるようなインセンティブも設計しました。

私たち3人ともソーシャルゲームやスマホアプリなどtoCのサービスを作ってきたこともあって、ユーザーが面白がってくれるか、使い続けてくれるかといったユーザー視点にはかなりこだわっていたんです。

当時、他のPHRサービスではここまでユーザー面に配慮していなかったのもあって、健保さんには「独自性があって面白い」と評価いただいていましたね。

ーーそうした取り組みが導入の後押しになったのですね。ちなみに、Pep Upというサービス名は初期から決まっていたのですか?

大山:わりと初期に決まりましたね。当時、サービス名にヘルスとか健康に関するワードを入れるかを悩んでいて。ただ、健康って真面目なイメージだからもっと気軽に楽しく取り組めるような名前にしたいとは思っていたんです。

そんなとき、JMDC創業者の木村さんが過去に「Pep(ペップ)」という健保加入者向けの冊子を作っていたと聞いて。「Pep」は英語で「元気」という意味なんですが、楽しそうな響きでいいなと思いました。

そこで、会長が作ったサービスの意思を引き継ぎつつ、さらにバージョンアップさせていくという想いを込めて「Pep Up」と名付けたんです。直訳の「元気づける」という意味合いがサービスにも通じるものがあるし、私たちが掲げた「楽しく取り組める健康増進」というコンセプトにも非常にフィットすると思いました。

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さらに、ロゴにもこだわりました。Webサービス界隈では有名なデザイン会社があるのですが、サービスの成功を願掛けする意味を込めて、そこにお願いして作ってもらったんです。「健康」というイメージとは少し異なる、カジュアルで親しみやすいデザインにしました。

サービス急成長の裏で起こっていたこと

ーーリリース後は順調に伸びていったのでしょうか?

中井:そうですね。ファーストクライアントが決まって以降、息つく暇もなく忙しくなっていった感じです。2016年2月のリリース時には約10組合の導入が決まり、各健保に合わせたカスタマイズ機能の対応に注力していました。同時並行で運用も始まっていたので、開発サイドではしばらく大変な日々が続いていきました。

ルーシー:時期でいうと、2017年~2018年はカスタマイズ対応に集中していました。ありがたいことに導入数は増えていくけれど、開発が追いつかない。プロダクトの成長の方が組織の成長よりずっと早くて、導入を待ってもらわないといけないほどでした。

中井:記憶があまり残っていないほど忙しかったですね。その中でも覚えているのが、ある健保さんのウォーキングラリーがスタートする予定まであとわずかなのに、何もできてなくて、ルーシーが超特急で対応したこと。火事場の馬鹿力じゃないですけど、あの時の対応力は半端なかったと思う。

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エンジニア:中井さん

ルーシー:かなり泥臭くやっていましたね。大変ではあったけど、Pep Upのグロースには必要なフェーズだったと思います。一度導入すれば契約ストップすることもほぼなかったし、クチコミで広がっていった部分もありましたから。

もちろんすべての要望に応えていてはキリがありません。私たちとしては汎用性があるか、運用的にも無駄が生じないかなど様々な観点を踏まえて機能開発するかを判断して提案していました。それでも他サービスは手を出さない、かゆいところに手が届くような機能を地道にコツコツ対応してきた自負がありますよね。

中井:インフルエンザ予防接種の補助金をWeb申請できる機能は、特に重宝されて導入する健保さんが多かったですね。

ーーその後は組織の成長も追いついてきたのですか?

中井:HDPに参画してくれるエンジニアは少しずつ増えていきました。ただ、今度は急ピッチで開発を進めていったがゆえの問題が顕在化するように。Pep Upの導入が増えるたびにデータが大量に流れて来るため、システムに大きな負荷がかかっていました。しかし、その課題解決にリソースを割けていなかったんです。特に医療費通知の配信システムは登録に数時間かかっており、運用が破綻してしまうリスクを抱えていました。

大山:当時はカスタマイズ対応も落ち着いてきた頃だったので、いったん新規開発の手を止めて、たまっていた技術的負債を返済する方向へ切り替えることに。システムなどの技術的負債の解消に加えて、サービス運用の手作業を減らして効率化を図ったり、個別化された機能を共通化したり、1年ほど体制やサービスの見直しにフォーカスしていました。

ーー負債を解消していく中で、JMDCと統合したのですね。

大山:はい。2018年11月にJMDCに吸収合併という形で統合しました。当時HDPは20人ほどの組織になっていましたが、Pep Upをさらにグロースさせていくには、JMDCの一員としてやっていった方がメリットが大きいとの判断からです。HDPは、JMDC開発本部のユーザープラットフォーム部として新たなスタートを切りました。

中井:健保さんにとっては、親会社、子会社が別々よりJMDCとして一本化した方が分かりやすかったでしょう。また、管理面でJMDCとHDPとで線引きされていた部分も全体を管理できるようになって、業務がやりやすくなったと個人的には感じています。

ルーシー:ただ、やはり両社の文化の違いはあったので、メンバーのケアも含めて落ち着くまで半年くらいかかったかなと。最終的にうまくまとまったのは、HDPのカルチャーに対してJMDC側が理解を示してくれ、部署にある程度裁量を持たせてくれたからだと思います。

ちょうど会社も変革のタイミングで、スーツ着用だった開発職で私服がOKになったり、チャットツールが解禁されてSlackが使えるようになったりと仕事がしやすい環境に変わっていきました。

ーー統合以降、Pep Upの開発では、どのようなテーマに取り組んだのでしょう?

中井:主に2つありました。1つは、運用の負荷を減らしながら同時にID発行数を増やしていくこと。そして、特定保健指導(※)に関する新サービスを開発すること。後者は、Pep Upのサブプロダクトと言えるくらい大きなテーマでした。

(※)特定保健指導:40歳~74歳を対象にしたメタボリックシンドロームに着目した特定健診の結果から、生活習慣病予防が必要であると判定された人に、保健師や管理栄養士などの専門スタッフが生活習慣改善のサポートをする。

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▲Pep Up上で、特定保健指導が受けられるサービスを開発

ルーシー:2019年に「クリンタル」という医師紹介サービスを運営する会社が統合されて、同じ部署のメンバーに加わりました。クリンタルチームも、Pep Upの保健指導サービスを一緒にやったのもあって、スムーズに融合できたと思います。

大山:統合以降、順調に導入数が伸びていき、2021年半ばには300万IDを突破。今までを振り返ると、立ち上げ期はいろいろ苦労もあったけど、そこで基盤を固められたからこそ、拡大につながったのだと思いますね。

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▲導入する保険組合が年々増えていった

「社会的に正しいこと」を積み重ねた先に見えるもの

ーー立ち上げからこれまでのお話の中で、「Pep Upがグロースできた理由」がいくつか出てきました。まとめると以下のようになるでしょうか。

  • JMDCが持っているアセット(稀有な医療ビッグデータ、健康保険組合との信頼関係&営業ルート)を有効活用

  • 健康保険組合へのカスタマイズ対応に注力

  • エンタメ系Webサービスの知見を応用し、ユーザー視点での面白さを追求

大山:そうですね。もともとあるJMDCの強みと、私たちのBtoCのサービス開発における知識や経験が掛け合わさったこと、そして泥臭くお客様に寄り添ってサービスを開発してきたのが奏功したのだと思います。

それから、厚生労働省が進める「第2期データヘルス計画」(2018年~2023年)という国を挙げた取り組みも追い風になっています。健保が保険加入者の健康に関してより深く介入し、成果を求められているのです。

ーーこれまでのキャリアで様々なサービスを開発してきたと思いますが、Pep Upの開発ならではの難しさとは何だと思いますか?

中井:個人データを取り扱うため、相当な配慮が必要な点です。Pep Upでは、健診データと台帳データ(保険証の情報)を紐づけるためのロジックを組んでいますが、番号で当てられないものもあります。

例えば、同姓同名の場合は、どちらの人のデータか判断できない可能性が起こりうる。こうした判断が曖昧になるデータは絶対に表に出さないようなロジックを組む必要があるんです。PHRという個人の健康管理ツールに他人の情報が出てしまうことは、100%避けなければいけないので、そこには神経を使います。

ルーシー:扱っているデータもさまざまな特徴を持っています。健診データでいえば、健診を受けた日からデータを反映できるまでには、2~3ヶ月とブランクがあります。時間が経ってしまった情報をどう通知したら見てもらえるのか。

また、見て終わりにならず、日常生活でどう活かしてもらえるか。健診は年に1~2回しかないけれど、Pep Upで自身の健康状態を定期的に確認し続けてもらうにはどうしたらいいか。こういうことを考慮してシステム設計するのが、頭の使いどころでしたね。

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▲健診結果をどう見せるかに工夫を凝らした

ーーヘルスケアサービスを作る面白さは、どんなところにあるのでしょうか?

ルーシー:ユーザーからの反応が直接わかるところですかね。「Pep Upに出ていたこの記事がとても役に立った」と感謝の言葉を問い合わせフォームに送ってくれる方もいて、素直にうれしかったです。

私自身、Pep Upに携わる前は健康や医療の分野は全く興味がありませんでした。でもやればやるほど知識が増えて、自分の生活習慣を見直すきっかけにもなった。糖質摂取後のピークが大きくならなような食事方法など、参考になるトピックが本当に多いんです。

そして知識が増えていくうちに、Pep Upを通して多くの人々の健康にも貢献できている実感を持てるようになりました。

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エンジニア:ルーシーさん

中井:確かに医療や健康のトピックが身近にあるのは、面白いですよね。JMDCには、医師や看護師、栄養士、保健指導員など医療の専門職の方が在籍していて、一緒に仕事をすることもあります。私としては、医師として臨床経験のあるクリンタルメンバーの鈴木さんと仕事ができたのは、楽しかったですし、学びになったと思います。

大山:ヘルスケアサービスってマネタイズポイントが確実にあるはずなんですが、どこにあるかが即座にはわかりにくいんです。初期フェーズでは「これは社会的に正しいことだ」と信じて、やっていくしかなくて。でも、その正しいことに人やデータが集まって、価値になっていくものなのだと実感しています。

ゲームのヒット作を生み出すのも面白いけれど、Pep Upのようなコツコツ積み上げて価値を生み出す、いわゆる大器晩成型のサービスにしか味わえないものもある。積み上がった先の未来が、世の中に大きく貢献できる可能性があるのがヘルスケアサービスならではの面白さかなと思います。

Pep Upの基礎を作った3人は、新しいサービス作りへ

ーー皆さん、2021年8月にPep Upの部署を離れて、プロダクトインキュベーション室へ移りました。現在は、どんな仕事をしているのですか?

大山:プロダクトインキュベーション室は、新規事業開発やグループ会社のサービスグロースを手がける部署です。私は室長として、企画やプロダクトマネジメント全般を担っています。

中井:新たなオープンプラットフォームを作る構想に向けて必要となる開発に取り組んでいます。今はPep Upからデータを取り込むAPIを開発しているところです。基本私1人で進めているので、手を動かすのはかなり久しぶりで新鮮ですね。楽しくやっています。

ルーシー:私は、Pep Upの企業版「Pep Up for Work」という従業員の心身の健康を管理する新規サービスの開発をしています。チームにジョインしてからは、本リリースに向けて、フロント、バックエンド問わず、その都度必要な仕事に取り組んでいました。

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▲企業向けの新規PHRサービス「Pep Up for Work」

ーー新たな道へ進んでいるのですね。最後に今後の目標を聞かせてください。

中井:JMDCは、将来性のあるビジネスを手がけていて、まだまだやれることは山ほどあります。技術者としては、こうした環境を活かしてプロダクトとして形にしていくのがミッションだと思っています。

今、手を動かして作るのは楽しいと思う反面、やはり1人でやっていても大きな課題を解決できないと実感していて。まずしっかりと土台を作って、関わるエンジニアを増やして、組織と個人の成長につながるような開発をしていきたいと考えています。

ルーシー:私は、今後も多くの人に必要とされる個人ユーザー向けサービスを作っていきたいですね。Pep Upに関わって思ったのは、JMDCのビジネスは需要がある領域なので、良いサービスを作ればしっかり評価されるということです。

最近、プロダクトインキュベーション室には、多様なバックグランドを持つエンジニアが参画していて、チームの戦力がぐっと上がっています。刺激があって楽しいですよ。これからもサービス運営のチームメンバーを大事にして、ともに成長していけたらと思います。

大山:先ほどルーシーが話していた企業向けのPep Up(Pep Up for Work) と既存のPep UpをID連携して、総合的な健康増進プラットフォームを作ることを目指しています。2つのサービス運営を通して、企業と健保のコラボヘルス(※)を進めていきたいですね。

※コラボヘルス:企業と健康保険組合が連携し、従業員・家族の健康づくりを効果的・効率的に実行すること。

これまでは、健康を意識する層が一部だったこともあり、企業や健保を通じてPHRサービスを提供してきました。しかし、世の中も変化して、ユーザーが自身の健康状態に興味を持つ時代が来ています。
このタイミングだからこそできるユーザーニーズに根ざしたサービス作りに今後は注力していきたいですね。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。
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