グループ会社のデータを掛け合わせて無限に事業アイディアが生まれる環境とは

医療ビッグデータを活かした事業を幅広く展開しているJMDCでは、多様なグループ会社を仲間に迎え、豊富なデータとM&Aを通じて参画した起業家、事業開発・経営経験者、コンサルティングファーム出身者が、グループ会社マネジメントや、事業部門幹部、PMI室などに多数いる協調関係を活かし、事業開発に取り組んでいます。JMDCの持つデータを基盤に、グループ会社のソリューションや専門性を掛け合わせると、そこには新規事業の大きな可能性が広がっています。同社のPMI室で、グループ会社と共に事業開発を行う三原洋一氏に、JMDCにおける事業開発の面白さや環境の魅力をうかがいました。

 

<プロフィール>
三原 洋一(みはら よういち)株式会社JMDCPMI室 室長
前職はJMDCと同じグループ内にて農業ベンチャー代表を約10年務める。その後、JMDCグループに参画し、株式会社JMDCキャピタルにてPMIを担当。現在はJMDCのPMI室長を務めると共にメディカルデータベース株式会社の代表取締役等、グループインした複数社の役員を兼務。

 

不退転で新規事業づくりに奔走

――まずは、三原さんのこれまでのキャリアについて伺えますか。

2009年に、JMDCの元親会社のグループに事業開発職として入社しました。元親会社は写真の現像機で世界トップシェアでしたが、デジタル化の波に押されて業績が悪化しており、新規事業での再起を計画。そのとき、食分野での新規事業をつくる農業ベンチャーの立ち上げを担当し、そのまま創業と最初の新規事業として、植物工場の立ち上げと運営を私が担うことになりました。

元親会社から募った社員と7名の少数精鋭で事業に取り組んだのですが、設備投資して作った工場はレタスを常時30万株栽培できるくらい大規模で、当時日本で3本の指に入るほどだったんですね。そこまで大規模だった背景としては、リスクを避けて小さな投資からはじめて、少しの利益が出たとしても、事業の立て直しには意味がないからです。しかしそんな大規模な植物工場で、植物の環境を制御して最適な効率で運営していくノウハウを持った人は、日本のどこにもいなかった。さらに気候の問題もあって海外の事例も参考にならないので、自分たちで調べて学んだり、植物生理学の教授に話を聞きに行ったりしてノウハウを積み上げていくしかありませんでした。

Googleで「レタス」と調べて出てくる記事や論文を片っ端から読んで、論文を書いている先生にも一通り会いに行き議論させていただきました。「こんな植物工場作っちゃったんですけど」と。

 

――なかなかタフなご経験ですが、農業ベンチャー時代のご経験は三原さんにとってどんな強みになっていますか。

1つ目は、不退転でやるしかなかったので。ちょっとずつ手堅くやっていくことはできなかった。3年で成果を出さなければいけなかったわけですからね。そういう事業開発って今だと大胆すぎてやれないと思うんですが、当時は数人しか再建メンバーがおらず、自分でやるしかなかったこと。自分に専門性がなく、力量も足りないことは明確に理解していましたが、そもそも国内でも事例のない規模の事業なので採用市場を見ても経験者なんていないんですね。弱音を吐いたとしても頼ることが出来ず自分でやり切るしかない。そんなHard Thingsで自分のラストマンシップ、最後までやり切る力が培われた気はします。

 

2つ目に、考える力がかなり鍛えられました。先程の通り、植物工場の事業作りにおいて、先行事例や型はほとんどありません。だからこそ仮説を立てて、変数になりそうなものは全てセンサーなどで測定して記録して、KPIを作って……というプロセスを全部ゼロベースからやりました。葉っぱの大きさや養液の温度など、とにかく毎日測りまくるんです。最近のスタートアップでは、SaaSなどのビジネスモデルごとに共通する指標が議論されていて、この段階ならKPIはこれくらいといった指標がありますが、植物工場は誰もやったことがないので自分たちで仮説検証しながら指標を作るしかない。そこで培われたゼロベースからの思考力はほかでは得られないものだったと思います。

 

3つ目には、3年ほど徹底して環境をコントロールしようとした結果、生き物を思い通りにできるという考え方には限界があると気づけたのがよかったと感じています。植物工場って乱暴に言えば「徹底して環境をコントロールすると同じ形の野菜がいっぱい作れます」ということなんです。でも人間と同じで種の個体差は絶対あるし、生育環境によって差は出てくる。その気付きは今「人をコントロールできない」という考えにつながっていて。生き物の多様さをどう適切に理解し、自分の行動で手を打ち分けていくかを大事にしています。

 

――そこからJMDCにジョインされたきっかけというのは?

植物工場の事業は2018年の超大型台風で工場に甚大な被害が発生したことにより事業に大きな影響が出て、その後2020年に撤退するという決断に至りました。

事業期間中に野菜の健康機能性に関するオープンイノベーションも積極的に行っており、未病領域の臨床研究なども行っていたことからヘルスケアにも関心があり、、当時、元親会社の副社長でもあった松島さんの経営に惹かれる部分もあり、彼が経営するJMDCにジョインすることになりました。

 

――松島さんの経営の、どんな部分に惹かれたのですか。

性善説で経営をしていて、一度判断したら大胆に任せてもらえるのが魅力的ですね。ちゃんと頑張る人に機会を与えるスタンスでマネジメントされるのが、非常に心地よかったです。

 

PMIの業務

――三原さんのJMDCでの立場や業務について教えてください。

PMIとして、JMDCにグループインした企業のグロースや組織作りに携わっています。

入社した当初は、Web問診のサービスを提供するflixyがグループインしたばかりだったので、その代表と一緒にグロース組織の組成をやっていました。

これが医師でもある代表が作った優れたプロダクトで、ウェブサイトもしっかりしていて。コロナ禍で病院にもWeb問診のニーズが生まれ始めていた時だったので問い合わせでオーガニックグロースしている状態ではあったんです。さらなる成長のための取り組みを行いました。

 

その後も次々とグループインしてくる会社の、「あそこがなんか課題感があるみたいだからヒアリングしてなんとかしてきて」という粒度の抽象的な課題に対応してきました。課題を顕在化して定義して、そのグループ会社の代表やメンバーと「これが課題だよね」とすり合わせて。どうやって対処するかを合意したうえで、一緒にハンズオンでやっていくという流れですね。

 

――なるほど。多くがヘルスケア領域向けのITサービスで、農業ベンチャー時代とは事業の作り方が全く異なると思いますが、どのように違いや面白さを感じられていますか。

私は方法論にはあまりこだわりがなくて。抽象度の高い状態から具体のオペレーションを作ることが面白いので、むしろ課題が抽象的でよかったなと思います。

SaaSの場合は『ザ・モデル』という本に書かれているように、営業組織のあり方がある程度型化されている。どういう価値観でやるべきか、事例も多くあります。それらの型を参考にしつつも、例えば、flixyの場合はWeb問診というサービスに当てはめたときに適切な組織形態は何か、代表とともに検討し、インサイドセールスやカスタマーサクセスを作っていきました。

 

――グループ会社の中を覗いてみて、発見する課題はどういったものが多いのでしょうか。

みなさんビジネスモデル案や業界知見はあるので、困ってるポイントは実はほかのところで、特に組織の課題であることが多いですね。営業が思うように伸びない、人員不足といった課題を事前に聞いていても、実際は組織課題や行動規範がないことが原因になっていたり、価値観がコンフリクトしていたりといった、人の課題が多い。なので、実際に中身を見て課題を理解したうえで、その課題に合わせて手を打つ必要があります。人が足りなければJMDCから人を出したり、営業組織が型化されてないのであれば整えたり。

 

もちろん、最終的には売上成長速度を上げていくことを目指しているわけですが、「そのためにどんなビジネスをすれば良いか思いつかない」というケースはありません。そもそも起業家は明確な解決したい課題をもち、その課題解決のためのビジネスモデルを描いて起業しているので。なので、会社の成長を支援する観点では、売上のトップラインを伸ばしていくよりも、違う部分をサポートした方が価値が大きい印象はありますね。

 

――先程も「グループ会社の代表やメンバーとすり合わせ」するというお話がありましたが、グループ会社とはどのような関係性を築いていますか。

元々JMDCはデータの会社です。長らくデータを集めてきて、データを提供することが今も大きな強みですが、徐々にそのデータを活用するコンサルティングやソリューション作りに着手し始めました。ちょうどその時期に上場してM&Aをし始めたんです。JMDCは、データは持っているけれど、それをソリューションにするために試行錯誤していた中で、ソリューションの事業会社が加わって。ソリューション側はJMDCのデータを使って自社サービスの価値を高めたいニーズが強く、JMDC側はデータをソリューション化したいというニーズがあるので、ちょうどよいお見合いになったわけです。そういう意味では、補完関係にあると思います。

 

▲ヘルスビッグデータで医療の進化を支援

グループインした会社から、「こういうデータがあるならこういうビジネスを作りたい」「こういう機能を搭載したい」といった事業のアイデアが生まれてくるので、僕は適した部署に接続して、ディスカッションの場を作っています。先ほどは課題に対しての話をしましたが、この場合はニーズをお互いに出してもらって、連携の仕方を探るといったところをサポートしています。

 

「JMDC×グループ会社×自分の強み」で事業を生み出していく

――JMDC本体とグループ会社とで、共に事業を作れる面白さがあると想像しました。そのあたりは、三原さんから見ていかがですか?

そうですね。事業開発をしたい人からすると、ブルーオーシャンと言ってよいと思います。グループ会社含めて多様なデータを持っているので、「つなぎ合わせたらこういうことが世の中に出せる」という可能性は非常にたくさんあるんですよね。例えば薬剤のデータを活用することで、一般向けのより高機能なお薬手帳が作れそうだとか、できることが容易に思いつくんです。アイデアがあり、データも強いので、形にした瞬間に圧倒的に競争優位な立場で始まる。そういった状態から事業開発が始められるのは、かなり面白いと思ってます。

 

また、グループ会社の代表たちも、JMDCと一緒に何か新しいことをやりたいからグループに入ってきてくれているので、ありがたいことに新規事業のディスカッションを非常に歓迎してくれます。

ただ、事業開発をする人材が慢性的に足りていなくて。「こういうのやりたいね」という話は常にグループ横断でしていて、僕はそれをストックしているので、事業開発の人が入ってきたら主導してもらいたいと常に感じています。

 

――恒常的にやりたいことやアイデアは蓄積している状態なんですね。三原さんが積極的に提案したり、コミュニケーションをとったりしているのでしょうか。

横のつながりはかなりフラットなので、私やPMIメンバーが介在しなくても壁打ちは結構盛んにやっていますね。起業する方はもちろん事業開発が好きなので、自然と話している印象です。あとは発生したものを私がちゃんと拾い上げて、仮説検証できる状態まで持っていく。

JMDCにもさまざまなバックグラウンドを持った人がいるので、「あの人に聞いてみたら」と人をつなげながら。仕事の半分くらいは、そんなことをやっている気がします。

 

――その種を拾い上げて形にしていくために、どんな思考で事業開発に向き合っていらっしゃいますか。

先ほどの通り、オポチュニティやデータは豊富にあるので、「JMDCとグループ会社が持っているもの」に「自分の強み」を掛け合わせて、やれるところからやっていきます。JMDCのデータと自分の強みを掛け合わせたら、こういう市場を取りに行けるんじゃないかという見立てを自分で定義して、自分で宣言をする。「いいね」となって会社の合意がとれたら、自分の仕事として取り組んでいく流れです。グループ会社を横断した事業開発はそんな感じですね。

 

――幅広い可能性の中で、自分の宣言で始めていくので、本当に起業家のようですよね。

自由と共に自律は非常に重要でだからこそ押さえておくべきこともあります。全体戦略というか、医療業界全体においてJMDCグループがどういう状態に置かれていて、今後の課題や注力ポイントは何なのかを、自分の言葉で理解しておく必要があると思います。これはWill、Can、MustでいうMustですね。

Wiiはグループ会社の人たちがこの領域でやりたいという思いを持って起業していますし、そこに自分のCanを足してグロースしたり新しい事業を生み出したりしていくわけです。なのでそのバランスを取っていく必要はあります。自分ができることだけをやってもグループにとってのバリューにはなり難い。なので全体を理解しておくことが非常に大事です。

 

それから、「イシューから始めよ」を地で行く世界なので、イシューに対してちゃんと行動できてるのか常に考えなければいけない。「今、この課題に自分のリソースを割いていいんだっけ」という自問自答をずっとしています。

事業開発の機会を自分で探せるのはある意味自由ですが、その自由の裏には責任があるので、責任を理解することが大事だと思っています。自由と責任がセットであることを理解しておかないと、バリューを出せないし、壁打ちや相談の巻き込み力も減っていく。自分の行動のトレードオフになってるものを理解しながらやっています。

 

――そこは難しそうなポイントですね。イシューに対してきちんとアクションするために、三原さんが意識されていることはありますか。

壁打ちは結構していますね。「今こういう機会があってこの会社にこういうアセットがあるから、グループ中のこういう人が支援することでこの事業はこれくらいグロースすると思う」という見立てを松島さんやキーマンに話してみる。壁打ちベースで相談をして、フィードバックを得て、という確認をしています。

 

プロフェッショナルの力を借りられる環境

――三原さんは、JMDCでの事業開発の面白さをどんなところに感じていらっしゃいますか。

今、私が取り組んでいるサービスは、BtoCやBtoBではなくて、言うならばBtoD(ドクター)。ユーザーニーズを捉えるのみではなくて、医師や医療制度も視野にいれる必要がある点で、特殊な事業開発なんです。その複雑性の中で仮説を作り、いろんな人に当てていくわけですが、JMDCにはその上で心強い、業界知見を持った人たちがたくさんいます。医師や看護師などの医療の専門家から、製薬会社や保険会社にコンサルティングをしていたコンサルティングファーム出身者、起業家、事業開発・経営経験者の人など。こういったプロフェッショナルの人たちが、自身の今の役割に限らず、非常にグループの事業開発に対してポジティブなんです。「議論が進むなら、自分が積み重ねてきた知見を入れてほしい」といって、会議やSlackのチャンネルに加わってくれる人が多い。こういう環境で事業開発の議論ができるのは、面白いし恵まれていると思いますね。

 

さらに言えば、皆経験が豊富な人たちなので、ディスカッションしてみると、その人が一度考えたことがあったりするんですよね。すでにその道で百戦錬磨の人がいるので、簡単に社内の壁打ちの壁を越えられないですし、良質なフィードバックが返ってきます。周囲にもっと考え抜いた人がいることは、事業開発する人にとって良い機会。1000本ノックみたいに鍛えられますし、その中で自分の強みが見つかることもあると思います。

 

というのも、壁打ちの中で生まれたアイデアで、「ここで自分の強みが生かせる」という覚悟が持てる瞬間があると思うんです。「周りの方が業界についてはよく知っているけれど、ITについては自分の方が強いから、ITの色をつければこういう事業が実現できる」というアイデアが出せれば、本当にやり抜ける事業になると思います。さまざまな業界の事業責任者クラスが全方位にいるので、それを打ち抜けるくらいの強みが見つかったら、自然と覚悟がうまれ、きっと将来のキャリアにおいても使えるものになると思うんですよね。

 

――社内のプロフェッショナルたちにかなり鍛えられそうですね。

でも、先ほどの通り皆優しくて壁打ち自体はすごくウェルカムなので。もちろん敬意をもったコミュニケーションが前提ではありますが、アイデアが弱いからといって追い返されたりしないですし、そういった心理的安全性があることも、JMDCの事業作りのよさだと思います。



――その心理的安全性の高さはどこから来ているんでしょうか。

まず、そもそも松島さんの性善説で経営する文化があって、誰かを叱責するとか人のせいにするみたいな空気が会社にないんですよね。

また、ヘルスケアという事業への思いがあってジョインしている人が多い中で、JMDCの事業のグロースが医療の課題解決につながっている実感があるんだと思います。もちろん、売り上げとして対価は入ってくるわけですが、価値を提供して世の中の医療費を削減したり、健康年齢の延伸に貢献したり、「ヘルスケア業界のために良いことをしている」というのは、事業を通じて伝わってくるので。そんな空気が社内全体にとりまいているので、成長の中でもサポーティブでぎすぎすしない文化が保たれているんだと思います。

 

豊かな環境ですばやく動ける若手に期待

――三原さんの今後の展望や挑戦したいことについてお聞かせください。

グループが拡大する中、各社それぞれの事業開発を行っていますが、それが大きなシナジーになってJMDCの次の事業の柱が生まれるといいなと思っています。それは作りに行って作れるものではないと思いますが、自律分散型の組織の中で、結果的にグループを起点に次の柱ができたらと。

私も自身でまた新規事業開発を牽引したいという想いもありますが、JMDCでの役割は自分自身が主体として実践するよりは、事業開発をしたい若手たちが活躍できる場を作って機会を提供したい。全体として大きく同じ方向に向かっていった結果、その事業群が新たな事業の柱になっていくことだと思い定めています。そういうチーム作りをしたいですね。

 

――最後に、これからJMDCのBizDevとしてジョインされる方に、期待したいことを教えてください。

PMI室としては、マチュリティとアジリティを兼ね備えた方に来てほしいのですが、特にアジリティの高い方、歓迎です。というのも、すでにPMI室には事業開発経験者、しかも医療ドメインでの経験者や経営経験がある人材がいます。そういう意味ではマチュリティは組織に備わってるので、学習の機敏性と実行力を持った方が入っていただければ、壁打ちの相手はいるし、知識の補給もできるし、機会も豊富にある。先程の通り心理的安全性も高いので、素地がある方がチャレンジするにはいい環境だと思います。

また、PMI室はグループ全体を横断的に見て、課題や事業機会を顕在化することがミッションですが、その先の実行部隊として、グループ会社に出向して経営メンバーになっていく道もあります。グループ全体で機会を探して、オーナーシップのもとに宣言をして事業を開発し、ゆくゆくはその責任者としてグループ会社を経営していく。そういうキャリアを描きたい若手にはぜひ来ていただきたいですね。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。
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