薬剤師の経験をもとにサービス開発のキャリアを歩んできた軌跡

JMDCでは医療系資格を保有する社員が多数在籍しており、医療ビッグデータを活用しながら様々なビジネスを展開しています。今回は薬剤師の資格を持ち、JMDCで「ポリファーマシー通知」サービスを立ち上げた鈴木さんに話を伺いました。

 

<プロフィール>
鈴木 秀実(すずき ひでみ)株式会社JMDC 公共政策産学連携本部  
昭和薬科大学 薬学部を卒業。株式会社ベルシステム24にて新薬の開発業務受託機関にて治験に従事。その後調剤薬局管理薬剤師を経験し臨床を学び、有限会社レリーフを設立し代表取締役として3店舗の薬局を経営する。
在宅医療専門のクリニック門前薬局で400床/月の施設個人在宅を担い、末期在宅医療を習得する。在宅医療の知識を武器に株式会社日本調剤の本社にて課長職就任。施設在宅と保険者向けサービスの企画営業に就き保険者向けの営業企画をリード。
2019年10月よりJMDCに在籍。ナッジ理論を活用したポリファーマシー対策通知の企画開発(東大監修)、長久手市にて疾患発症予測AIを活用した地域医療DX、重症化予防を推進。

 

薬剤師を極めるために起業の道へ

——まずは鈴木さんが薬剤師になろうと思った理由を教えてください。

もともとは科捜研で薬毒物鑑定などを行う「裁判化学」に興味があり、薬学部に入学しました。しかし薬学部で勉強するなかで薬剤師の方が自分に向いていると考え、薬剤師資格を取得し、大学卒業後は製薬会社から医薬品開発の臨床試験や製造販売後の調査業務を受託しているCRO(医薬品開発業務受託機関)に入社しました。

 

——その後、どのようなキャリアを歩まれたのでしょうか。

患者さんにさらに寄り添いたく、チェーン展開している薬局に勤めるようになりました。新店舗の立ち上げを数多く担当しているうちに「もっと患者さんの健康に寄り添える薬局を自分でつくりたい」と思うようになったんです。その背景もあり、自分の薬局を立ち上げました。自分の理想を実現して社員と喜びを分かち合えたのは、とても良い思い出です。

 

——患者さんと向き合うなかで薬剤師として得られる喜びとは、どのようなものでしょうか。

患者さんがもらった薬は病気のプロであるお医者さんから処方されたものなので、患者さんがその悩みを直接お医者さんに伝えるのはなかなか難しいことなんですよね。「あなたの診断が間違っていましたよ」とクレームを入れているような感覚もあって。その点、薬剤師であれば「この薬を飲んだらこのような症状が出た」と悩みも相談しやすい。もし薬の副作用が疑われるのであれば「こんなふうにお医者さんに相談してみて」とアドバイスできますし、新しい疾患であれば「それなら何科に行ったほうがいいですよ」とアドバイスができます。

結果的に「薬を変えてもらったら、すごく体調が良くなった」とか「お医者さんに行ったら早期発見できた」などの声を聞くと、薬剤師として貢献できたと感じられるんです。

 

——なるほど。薬局は何年ほど経営されていたのでしょうか。

5年ほど経営した後、他の方と一緒に事業を拡大して在宅医療に力を入れるようになりました。お医者さんと一緒に患者さんのお宅に行ったり、高齢者施設に行ったりもしましたね。在宅医療では薬局の中で調剤するだけでなく、深いところにまで携われるのでさらにやりがいを感じながら仕事ができたんです。そこから在宅医療を極めたいと思うようになり、日本調剤という大手薬局に入社し高齢者施設に薬を届けたり医師の診察に立ち会う部門で営業サポートや企画をリードし係長になりました。

 

JMDCでしかできないことがある

——JMDCと出会ったきっかけを教えてください。

日本調剤では私が在宅医療で培った経験や知識・ノウハウを、組織に浸透させる仕事をしていました。そこからある程度の期間が経ち、ビジネスも軌道に乗ったため健康保険組合や自治体向けのサービスに異動になりました。そこで健康保険組合のデータ分析にも触れるようになったんです。薬剤師は患者さんと1対1でしか向き合えませんが、健康保険組合のレセプトデータを介することで多くの方に向き合える面白さを知りました。

そんなときにJMDCの創業者である木村さんの講演を聞く機会があり「匿名化の技術を活かして、データの力を世のために使おう」というお話に強く感銘を受けて、その場で「JMDCに入れてください!」と直訴しました(笑)

 

——その後どうなったのでしょうか(笑)

木村さんから人事にお繋ぎいただいて、採用選考を受けました。

当時からやりたいビジネスがあり、どうすれば実現できるかはわかってはいましたが仲間内だけで行うとスケールしないため、高いマインドを持った方たちと一緒にビジネスとして全国に広げられる環境を求めていました。JMDCは健康保険組合向けのデータサービスを開発・展開していて、なおかつアカデミアや自治体との接点もあって、データサイエンティストや医療系資格を持つスペシャリストが揃っていたため条件が揃っていると考えて「JMDCならできる」と確信を持って入社しました。

 

——鈴木さんがJMDCでやりたかったこととは何でしょうか。

2020年12月にローンチした「ポリファーマシー対策通知」です。ポリファーマシーとは、薬の量や種類が多すぎるなど不適正な重複過量処方や飲み合わせによって副作用等の薬物有害事象を起こすことです。患者さんは病院ごとに違う複数の薬局を使っていることが多く、薬の飲み合わせを見ることが難しくなり、かえって体に負担がかかることがあります。もちろん、お医者さんでは気付かないで処方されているケースがあるので注意が必要なのです。

そこで健康保険組合や自治体などが保有するレセプトデータと、JMDCグループが保有する医薬品データを掛け合わせることで、ポリファーマシーのリスクがある患者さんを発見し「危険だから、この紙を持ってお医者さんに相談しに行ってくださいね」と医療従事者にチェックいただく通知を送るサービスを開発しました。

 

<多剤処方と薬物有害事象>

 

——このサービスが必要だと思われたのも、薬剤師の経験があったからこそなんですね。

そうですね。「そのためにお薬手帳があるじゃないか」と思われるかもしれませんが、お薬手帳を持っていくのを忘れたり、シールでもらったものを貼らずに捨ててしまったりする方もいて、データとしてはかなり不完全なものなんです。また、薬や自分の健康について何でも相談できて、知識や経験の豊富な“かかりつけ薬剤師”が身近にいる方であれば良いのですが、必ずしもそういう環境が整っている方ばかりではありません。ポリファーマシーが見つかりづらい現実を目の当たりにしてきたため、「みんなが幸せになるためにはデータの力が不可欠だ」という想いで「ポリファーマシー対策通知」を生み出しました。

 

大きな組織だからこそ大きな仕事ができる喜び

——「ポリファーマシー対策通知」のサービス開発で難しかったことは何でしょうか。

社内の薬剤知識がないメンバーに対して、ポリファーマシーの何が問題で、どのデータをどのように使えば解消できるのか。また、「ポリファーマシー対策通知」のサービスができれば、健康保険組合や患者さんにとってどのようなメリットがあるのか、といった理解をしてもらうことに苦労がありました。当時はいまよりも医療従事者が少なかったため、なおさらですね。

あとはポリファーマシーの定義がすごく複雑なため、システムの要件定義をするエンジニアにも多大な苦労をおかけしました。私はシステムの人間ではないし、エンジニアは医療従事者でないし、意思疎通のすれ違いがあったりもしましたね。

 

——それでも途中で諦めなかったのは、サービスに対する強い想いがあったからでしょうか。

それもありますし、進めるうちに理解してくれる方が増えていき「これはとても良い取り組み」と言って支えてくださる方が増えたからです。小さい組織だとコミュニケーションコストが低くて楽ではありますが、大きい組織では当然様々な方が携わりますから、みんなでコミュニケーションを取りながら協力し合わなければならないのは当然です。その苦労を皆で乗り越え、大きい組織にしかできないことを実現できた達成感を分かち合えたのはとても感動が大きかったです。

 

——「ポリファーマシー対策通知」でこだわったところなどはありますか。

通知を受け取った患者さんが、中身を読まずに捨てることがないよう封筒のデザインを工夫したり、中身を読んだ後に実際の行動につながるような文面にすることを意識しました。患者さんを怖がらせるのでもなく、お医者さんを怒らせるのでもなく、絶妙な塩梅になるよう同じ部署のデザイナーと一緒に表現にはこだわりましたね。

 

<「ポリファーマシー対策通知」の封筒デザイン一例>

 

——実際に「ポリファーマシー対策通知」をローンチされて、反響はいかがでしたか。

最初はお医者さんや患者さんからクレームが殺到するのではと恐る恐るでしたが、意外にもそういったことはなく、数件のクレームはありましたが折り返しのお電話を差し上げると患者さんに納得いただけて「調べてくれてありがとうございます」と喜びの声をいただくこともありました。健康保険組合へ効果検証の報告をした際も「JMDCにしかできないことだし、データの力をちゃんとわかりやすく活用できていて、とても良いね」と好評をいただいています。通知後、薬の変更や重複の削除がされていたり、有害事象が減少したりしていて効果はあったと実感しています。また、目には見えないところでは、通知を受け取った患者さんがお医者さんに相談するきっかけにもなっているので、地域医療の活性化にも寄与しているのではないかとも感じております。

 

データの力を世の中に活かすための新たな挑戦

——現在も鈴木さんは「ポリファーマシー対策通知」に携わっているのでしょうか。

「ポリファーマシー対策通知」の利用者さんから質問があったときに、分析して資料を作成したり、営業の方に同行して説明したりしながら携わっています。

また現在の主務は健康保険組合向けではなく自治体向けになるので、営業と一緒に自治体へ提案に行ったり、受注後に自治体が薬剤師会や医師会に説明に行くときに、資料を作成して説明させていただいたりもしています。またシステムは生き物と同様、ローンチして終わりではなく、メンテナンスをしながらみんなで育てていかなければなりません。私だけでは手が回らないため、いろいろな方にご協力いただきながら、これからもずっと携わっていくことになると思います。

 

——現在、鈴木さんがチャレンジされていることを教えてください。

自治体向けの部署は立ち上がって3年目になりますが、自治体の高齢化に対するソリューションの開発が急務です。高齢化という日本の社会課題に対して、JMDCはデータの力で何ができるのか、グループ全体で取り組んでいきたいとチャレンジしているところです。

 

——最後に、医療系資格を保有されている方に向けて、メッセージをお願いします。

医療を目指す方は、人を救いたいという高い志をお持ちだと思います。JMDCには医療現場では見えない医療があります。私は薬剤師を突き詰めた結果、ふと目に入ったデータの力に魅了されました。そして、JMDCに入社して、医療系資格とデータの力を掛け合わせることで、できることが広がっていると実感しています。JMDCには医療やデータのスペシャリストがたくさん居ますので、1人ではできないような様々なことができる環境だと思うので、医療現場だけでは解消できない社会課題の解決に挑戦されたい方にぜひ来ていただきたいですね。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。
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