JMDCは医療分野における社会課題を解決するために様々な取り組みを行っています。保有するレセプトデータを用いた傷病予測モデルや、健康状態を見える化し行動変容を促進する「Pep Up(ペップアップ)」など、ビッグデータを活用したソリューション開発もその1つです。今回のインタビューは、執行役員としてデータサイエンス部門を率いる浜田さんにJMDCに参画した理由、医療ビッグデータがビジネスや社会にもたらす可能性について伺いました。
<プロフィール>
浜田 貴之(はまだ たかゆき)株式会社JMDC 執行役員
JMDC参画以前は、ビジネスアナリティクスファームのCOO等を経て、ボストンコンサルティンググループのデータサイエンス組織のマネージングディレクター&パートナーを歴任。金融業界をはじめ、多様な業界におけるデータ戦略策定、デジタルトランスフォーメーション支援、アナリティクス施策の実行、新規事業開発等を推進。2022年よりJMDCの執行役員として、インシュアランス本部とデータイノベーションラボを管掌。
一貫してデータ分析のビジネス活用を推進
――アナリティクスファームのCOO、DigitalBCGでマネージングディレクター&パートナーなどを経験されてきたと思いますが、改めてこれまでどのようなことをされてきたのか教えてください。
キャリアのスタートは金融機関で、デリバティブ等の金融工学を用いた商品の組成と、それを顧客に説明する業務等を行っていました。その後コンサルティングファームに転職し、一般的なビジネスコンサルティングを行いつつ、自身の強みであったデータ解析を活かして、社内ベンチャーとしてアナリティクスファームを立ち上げ、ゼロから組織を拡大させることに取り組みました。その後、DigitalBCGではデータサイエンティスト組織の日本の責任者の1人として、様々な業界の新規事業推進支援などを行い、2022年にJMDCに参画しました。
これまで一貫して、データ分析をビジネスに活かすための推進を行ってきました。モデリング等のデータサイエンスを行いつつも、コンサルティングファームでは、それをビジネスとしての価値に繋げるべく、分かり易く伝えた上で、人に動いてもらう必要があるため、徹底してコミュニケーションを鍛えられました。結果的に、理系的な業務と文系的な業務が均衡したようなバックグラウンドとなり、データサイエンスとビジネスの橋渡し役として、新規事業の推進等を担う機会が増えていきました。
――データサイエンスとビジネスの橋渡しはなかなか難しい役回りだと思うのですが、特に気を付けている点は何かありますか。
企業の様々な方々が、それぞれに持つインセンティブを理解することが重要であると教えられてきました。コンサルティングファームは、数ヶ月に1度プロジェクトが変わりますが、金融機関から小売りやメーカー、大企業から中小・ベンチャー企業、日系から外資系等、多様な企業の中に、時には常駐して仕事をする環境に10年以上身を置いてきました。そこから、人がどのようなインセンティブを持って仕事をしているかの多様なパターンを理解・蓄積し、それを踏まえたコミュニケーションを行うことを意識してきました。長期目線なのか、足もとの利益なのか、人によっては、この人と一緒に仕事をすれば何か学べそう、と思ってもらえることが重要になることもあります。その上で、できる限り相手の言語領域でコミュニケーションを行うことも重要だと考えております
デジタルを用いた新規事業の推進においては、データサイエンス以外にも、アプリ開発やインフラなど、様々なエキスパートの参画・協力が必須になってきております。JMDCは、1つの組織の中で、多様な人材と一緒に仕事をする機会があります。プロジェクトメンバーそれぞれが強みやインセンティブを相互に理解、リスペクトした上で、プロジェクトマネジャーが各人のスキルを最大限活かせるようオーケストレーションすることも重要と考えております。
豊富なデータと社会貢献性がJMDCの大きな魅力
――コンサルティングファームで順調なキャリアを歩んできたかと思いますが、なぜ転職を考えたのでしょうか。
もともと事業志向を持っていて、コンサルティングファームのように第三者としてではなく、当事者として推進できる事業会社で働きたいと考えていました。そして、転職するときの軸は2つありました。
1つ目は社会貢献性です。これまで様々な業界を見てきて、自身が当事者としてやるからには社会貢献性の高い事業に取り組みたいと考えていました。そこで、子どもたちの世代を見据えても、ヘルスケア・医療分野は間違いなく日本の抱える大きな社会課題だと考えました。
そして2つ目は将来の市場性です。この観点でもヘルスケア・医療分野に大きな可能性を感じていました。日本で高齢化が進行していくと、一般年齢層を対象とする産業の多くは基本的にシュリンクしていきますが、ヘルスケア・医療分野は日本が課題先進国として取り組まなければならない領域です。それは即ち、グローバルを見据えても、日本が先んじて何かできる領域なのではと考えました。
――その中でなぜJMDCを選んだのでしょうか。
まず1つ目は、JMDCは、累積1,600万人規模の保険者レセプト等、日本最大級の医療ビッグデータを保有していることです。アナリティクスコンサルティングファームでの業務を通じて感じていたこととして、分析技術による差別化も重要ですが、それ以上に、保有しているデータによる差別化の重要性を感じていました。JMDCは保有するデータで、他社にはできないモデルや事業を作れますし、当社のデータでしかできない分析を求めて、優秀なデータサイエンティストが集まっています。さらに、他社とのパートナーシップ推進においても、自社のデータの価値を梃子にすることでコラボレーションしやすくなります。
2つ目は、組織としての機動力です。コンサルティングファーム時代に多くの大企業と仕事をしましたが、大企業になるほど、意思決定プロセスや既存インフラ等の問題で、新規事業の実現に数年単位の時間を要することも珍しくありませんでした。
例えば、AIは「人間の業務を置き換える」文脈で捉えられがちですが、既存事業が大規模で歴史があるほど、既存業務を守ろうとする大きな抵抗勢力が居たりして、イノベーションのジレンマが起こりやすくなります。しかし、JMDCにはベンチャー企業的な機動力があります。
保有するデータ量と機動性の関係については、通常大企業は、前者が強く、後者は弱くなる一方で、べンチャー企業は逆になります。JMDCは、日本最大級のビッグデータを保有しながら機動性も残っている、自身にとっては、最適点に位置付けられた企業でした。
また、入社後に感じたことですが、JMDCにはメンバーの実現したいことを大事にする企業風土があります。もちろん企業組織のため、施策のインパクト等も加味しますが、メンバーの熱量も重視しており、なるべく事業インパクトと各人の熱量が最大化する方向で事業が推進されております。
JMDCの医療ビッグデータでできること
――JMDCのデータのおもしろさはどこにあるとお考えでしょうか。
我々のデータのおもしろい点は、最大20年の長さやデータ規模の量も勿論ありますが、むしろ「深さ」にあると考えております。深さとは、1人1人に紐づいているデータの多様性を指します。例えば、薬局のデータであれば、各薬局毎に処方されている薬剤の量等は分かりますが、患者1人1人は当該薬局の中での行動しか紐づけることができません。一方で、JMDCのデータは、保険者由来のため、ある人が複数の医療機関・調剤薬局を利用している場合、その全てを紐づけてトラックすることができます。さらに、そこに健康診断のデータ、歩数・睡眠等のウェアラブルデバイスのデータ、最近では、血圧計や体組成計、食事の記録データなども紐づけられるようになりました。
このようなライフログデータが、健診値やレセプトの傷病発生等の答えとなる重要なアウトカムデータと紐づくことで、あらゆる傷病との因果関係の分析やリスク予測AIの構築等が可能になります。またデータの量と深さによって、他社では実現し得ない高精度なAIを作ることができます。
さらに、当社のPep UpというPHR(Personal Health Record)サービスを通じて様々な健康タスクを推奨すれば、どのような人が、どのようなアクションを行ったか、その結果どうだったか、といった行動データを蓄積・学習することができ、これによって、行動経済学的な分析も可能となります。AIは量と深さによって精度を高めることができるので、JMDCのビッグデータを駆使することで、パーソナライズされた最適な行動を予測し、日本の医療費削減に大きく貢献できると考えております。
成熟産業において全く新しい発想の新規事業を生み出すことは非常に難易度が高いことですが、JMDCはビッグデータ事業を行う非常にユニークな事業特性であることから、考えつくせないほどの戦略オプションがあり、様々な新規事業案が日々社内で挙がってきます。そこも、当社の面白さの1つだと考えております。
データサイエンティストにとっては、当社でしかできない多様な分析ができるだけでなく、ドメイン知識がないと扱うことが難しい医療データに関する差別化要素の強いスキルを身に付けることができ、データサイエンティストとしての市場価値も高められます。
――最後に、浜田さんが今後目指したいこと、やりたいことなどをお聞かせください。
データサイエンティストは、非常に高度で価値があることをやっていながらも、それが理解されずに埋もれてしまうことは少なくありません。
データサイエンティストがやりたいことを市場ニーズに合った形や、価値のあるビジネスに繋げていくことができれば、データサイエンティストはもっと正当な評価を受けられ、よりやりがいも感じられるようになると思います。
また、私自身も、データサイエンティストが取り組んでいることを、一般的なビジネスパーソンにもよく理解してもらえるようサポートしながら、様々な新規事業を推進していきたいと考えております。
データビジネスをする上で、やりがいを持ちながら働ける環境はJMDCに揃っておりますので、そのような方がいらっしゃれば、ぜひ一緒に働きたいと思っています。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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