グローバルヘルスケア企業元CEOがJMDCに入社した理由

医療ビッグデータを活かした事業を幅広く展開しているJMDCには、魅力的な経歴や豊富な経験を持ったメンバーが所属しています。今回はタニタで戦略子会社CEO、エス・エム・エスなどで買収先グローバル企業CEO、Aflac Ventures Japanでインキュベーション責任者を担い、2023年3月にJMDCの役員に就任した坂井さんに、当社に入社した理由や事業の可能性について伺いました。

 

<プロフィール>
坂井 康展(さかい やすのぶ)株式会社JMDC 執行役員 保険者支援事業本部長
ニューヨーク州立大学卒業後、アクセンチュア株式会社にて6年間コンサル業務に従事。その後、株式会社タニタに転職しIoT/クラウドヘルスケアサービスを行う戦略子会社を立ち上げ、代表取締役として新規事業を黒字化。2013年より株式会社エス・エム・エスに移り、MIMSグループのCEOとして事業規模を拡大。2022年1月よりAflac Ventures Japan株式会社にてインキュベーション責任者としてヘルスケア×データ×保険の切り口で複数事業を率いる。2023年3月13日よりJMDCの執行役員として保険者支援事業本部を管轄。

 

新規事業の面白さを知ったきっかけ

――まずは坂井さんのキャリアについて伺えますか。

新卒で外資系コンサルファームのアクセンチュアに入社しました。そこではグローバルサプライチェーンの設計/構築/運用のプロジェクトに多く関わっていました。

その中で印象に残っているプロジェクトは、半導体のグローバルサプライチェーンの仕事で、原材料、中間在庫、工場の製造キャパ、客先倉庫在庫や顧客需要予測など文字通り世界中に散らばるPSI(Production/Sales/Inventory) データの、実績・現状・将来計画を一元的に管理し、納期最適化、生産拠点戦略、売上予測精度や移転価格税制を踏まえたプライシングなどの様々な業務に活用する支援をしていました。今の言葉でいう「ビッグデータを集めて・活用する」というのを地で行っていて、この経験が、その後の仕事にも大きな影響を与えたんです。

 

――なるほど。その後、坂井さんは2006年にタニタに入社し、2008年よりタニタヘルスリンク代表取締役社長として、「からだカルテ」をはじめとするエンドユーザー向けの健康データ管理ビジネスを手がけるのですね。

そうですね。タニタではIoTを活用したクラウドヘルスケアサービスを立ち上げました。具体的には、体組成計、血圧計、歩数計、尿糖計、睡眠系などで測定したバイタルデータをクラウドに自動送信・蓄積し、モバイルやPCなどの端末で見て、専門家の指導を受けられるサービスをセットにしたサブスク型サービスです。

しかし、この新しい取り組みはメディア受けや業界受けは良かったのですがビジネス的には苦労しました。2007年のことなので、まだ初代iPhoneが発売される前で、スマホではなくガラケーの赤外線や特定省電力無線というコードレス電話の通信方式を使うなど技術的には古くコストも高く、一言でいうとToo Earlyだったんですね。それに気づいて、専門家の指導部分だけを切り出して、ちょうど当時から制度開始した特定保健指導に参入するなどして試行錯誤しました。要はなんとか生き延びてた感じです。

新しいことをいろいろ突っ込みすぎて難しい事業立ち上げでしたが、最終的になんとか単体で黒字化できたことは、事業経営者としての今日の私の自信にも繋がっていますし、事業開発の面白さとPLを成立させる難しさを身を持って学ぶ貴重な経験となっています。

 

――タニタで新規事業の黒字化を実現した後、2013年に医療介護情報サービス企業のエス・エム・エスに移りますが、印象に残っていることを教えてください。

印象に残っていることは2つあります。

1つ目は、エス・エム・エスにてアクティブシニア・ヘルスケア領域の立上げ責任者として、チームで様々な新規事業に取り組んだことです。新規事業では、認知症メディアや医療健康相談の立ち上げを行いました。先ほどのタニタ時代は事業を自分で作ることに面白さを感じていたのですが、エス・エム・エスでは優秀なメンバーと一緒にチャレンジする喜びを学びました。チーム一丸となって当時No1だったある認知症メディアをPVや検索順位等で破った時の達成感や高揚感などが、いまでも大切な思い出として残っています。このときの経験が、チームで事業を立ち上げる本当の楽しさを教えてくれました。

2つ目は、エス・エム・エスがシンガポールのMIMSグループを買収し、CEOに就任したときの経験です。

本社のシンガポールを中心にアジア・オセアニアの13ヶ国で事業展開をしている会社を買収し、既存ビジネスを伸ばしつつ、事業数や展開国を増やしながらグローバルレベルで両利きの経営にチャレンジしていました。

その中で面白かったのは、最終的には16ヶ国・地域で6つのビジネスモデルを展開していましたが、それぞれのビジネスモデルの中身は同じでも、各国刺さるサービスが全く違ったことです。それぞれ国の歴史や背景、目指す社会像が異なり、医療ヘルスケア産業を構成するプレーヤー間のパワーバランスが異なるため、成立するビジネス、勝てるビジネスが違うことを学び、印象に残りましたね。今回JMDCに入社を決めるきっかけにも繋がっています。

 

世界13ヶ国で見てきた医療制度の違い

――各国の医療制度で印象に残っていることなどありますか。 

シンガポールの医療制度ですね。MIMSグループのCEOに就任してからは本社のあるシンガポールに住んでいました。概略でお話しすると、シンガポールも日本と同じ国民皆保険の国ですが、シンガポールには自分の掛金と企業や国からの拠出金が個人アカウントの中でプールされ、保険適用の医療費はまずそのプール金の中から支払われ、プール金を使い切ると保険適用範囲が制限されたセーフティーネットな医療保険が適用されます。この仕組みにより国民一人ひとりが自分のプール金を適切に管理しようとするインセンティブが働くモデルになっています。個人の自発的な健康行動を促す仕組みと、社会のセーフティーネット」の両方をうまく効かせる仕組みがあるのにはとても驚きました。

また、シンガポールも2階建てのような皆保険制度で、上記の公的保険に加えて民間の医療保険に加入していますが、この民間医療保険会社の動きもエキサイティングでした。

シンガポールもコロナの初期は厳格なロックダウンと行動制限があり、クリニックや病院の受診もとても不便な時期がありました。この時、民間保険会社は契約する企業(保険契約者)にオンライン診療の説明スタッフを大量に派遣し、自社の投資先など身内のオンライン診断プラットフォームに猛烈に誘導していました。保険会社にとっては、既存のクリニックや病院は支払い先の一つにすぎませんが、自グループ内のオンライン診療サービスに誘導できるとなると、経済面をはじめあらゆる面でメリットがあることが想像できますよね。だからだと思いますが、当時この動きは大規模で、早く、徹底的でした。

当時のこの領域で指数関数的に伸びるビジネスを見て改めて、産業構造の違いにより刺さるビジネスモデルが違うことを感じました。

 

JMDCで挑戦したい保険者のエンパワーメント

――日本と大きく様子が異なりますね。坂井さんはこうした知見をもとに2023年3月からJMDCの役員に就任することになりましたが、なぜJMDCに入社したのでしょうか。

JMDCに入社した理由はいくつかあります。

1つ目は、保険者への興味です。これまで様々な医療産業構造のパターンとそこで刺さっているビジネスを見てきて、日本において保険者を支えていく事業の裾野の広さ、伸び代の多さ、周辺事業への影響力の大きさを改めて思い知りました。そこに私が学んできたアクセンチュアでやったシステムやデータを利活用しきること、タニタでやったテクノロジーを活用して医療・ヘルスケアを前に進めること、エス・エム・エス/MIMSで経験した医療構造とパワーバランスの違いよる刺さるサービスの目利き、といった経験を総動員して、保険者をエンパワーする(支える・強くする)ことを実現したいと思ったことです。

2つ目は、JMDCの持つ底知れぬ可能性です。まずは、保険者領域一つをとっても深堀・伸び代が多くまだまだ可能性に秘めています。更に、隣接する医療ビックデータをはじめとするRWDビジネスはすでに財務インパクトをもって強く成長しています。更に、自社内および資本出資先パートナーが推進する異なる領域・時間軸での新規事業には、JMDCのトラックレコードから他社の新規事業とは比べものにならない確度を含んだ可能性があると感じました。

3つ目は、JMDCの経営力の高さです。我々のいる領域は玄人の領域というか、独創的な発想力とスピード感だけで勝てない難しさがあると思っていますが、JMDCには、その医療ヘルスケア領域の難しさを踏まえた玄人に委ねる任せる力と、戦略、技術、組織力、オペレーション力を浸透させて安定化・確実化させる力といった、高い経営力があると感じています。更に、昨年発表したオムロンとの資本業務提携には正直驚きました。JMDCほど勢いのある会社であれば、一気呵成に勝てると思ってもおかしくありませんが、大きな社会課題・社会貢献を成し遂げるのに、能力や勢いだけでなく、自分たちより事業規模の大きい企業と一緒に長期で大きく取り組む姿勢は尊敬に値すると思います。

▲ヘルスデータ事業の展望

ーー色々なご縁があり、JMDCの仲間になってくれたのですね。最後に、コメントなどあればお願いします。

医療やヘルスケアは文字通り人の命と健康に関わる仕事で、新しいテクノロジーやビジネスが必ずしも良いわけではありません。保守的である必要がありますし、サイエンスドリブンである必要があります。また、日本が世界一の長寿国であることが示しているように、日本の医療社会システムが世界に類を見ない素晴らしい仕組みであることは間違いありません。

私はここに謙虚に学びながら、しかし遠慮と忖度なく、JMDCの仲間とともにアセットを活かしながら、医療ヘルスケア周辺の課題解決を通して社会に貢献し、会社と個人がともに成長できるように努力しようと思っております。

これからよろしくお願いします。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。
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