元BCGコンサルタントが前進できる組織に立て直した全社改革の取り組みとは

医療ビッグデータを活かした事業を幅広く展開しているJMDCでは、多様なグループ会社を仲間に迎えています。今回は、遠隔画像診断支援サービスの国内市場で確固たる地位を築いているドクターネットのCEO長谷川さんにインタビューを実施。課題が山積みだった組織を全社改革し、前に進んで戦える組織にしてきたという長谷川さん。その長谷川さんにドクターネットに入社した経緯、今後の事業展開、キャリアなどについて伺いました。

 

<プロフィール>
長谷川 雅子(はせがわ まさこ) 株式会社ドクターネット 代表取締役社長兼CEO
東京大学経済学部を卒業し、ボストンコンサルティンググループに新卒入社。東京・ソウルオフィスにて、全社改革プロジェクト・成長戦略策定プロジェクト等を担当。2017年1月、株式会社ドクターネットに入社し、2017年6月に代表取締役社長兼CEOに就任。

 

転職のきっかけは「チーム一丸での目標達成」

ーーまずは、長谷川さんのこれまでのキャリアについて伺えますか。

新卒で戦略系コンサルティングファームのボストンコンサルティンググループ(以下、BCG)に入社しました。もともと国家公務員を目指していましたが、新卒から国家公務員として働くことがはたして国を変えるための最短最善か検討した結果、まずは戦略コンサルでの修行が必要だと思って、BCGに入社しました。

実は山元(JMDC 副社長兼CFO)と、野口(JMDC 執行役員)もBCG同期メンバーとして、切磋琢磨していました。

 

ーーBCGでの具体的な業務についても伺えますか。 

ゲーム、製薬、アパレルなど様々な業界のプロジェクトに参画し、クライアントの経営層に対して、事業計画や新規事業立案などをしていました。情報収集や分析、提案書作成などのポータブルスキルはそこで磨けたと思います。

その中でも特に印象に残ったことは、地方のエネルギー系企業の全社改革プロジェクトです。100名規模のプロジェクトリーダーとして「毎年これくらい削減額を目指そう」と目標を設定し、活動していました。

途中、「なぜこんなことをやるのか」と反発もありましたが、最終的にはお互い心を開き、ベクトルを合わせて目標達成をすることができたんです。

事業会社に常駐して一緒に全社改革をしたこの経験はコンサル人生でも特に楽しく、熱量高く取り組めました。そして、このプロジェクトが事業会社に転職するきっかけにもなったんです。

 

ーーこのプロジェクトを楽しく、且つ熱量高く取り組めた理由についても教えてください。

プロジェクトメンバーを巻き込みながら、一緒に汗をかいて目標に取り組めたからです。

これまでは戦略コンサルの特性上、戦略を描いて終わるプロジェクトが多かったのですが、このプロジェクトでは実行まで担いました。

プロジェクトの一連の流れで難しいことは、実行して成果を出すことなんですよね。でも、その難しさをチームで乗り越えて目標を成し遂げたときの達成感はこの上ない喜びでしたし、リーダーとして主導できたことにやりがいを感じました。

 

ーーこのプロジェクトでリーダーとして意識していたことはありますか?

2つ意識していたことがありました。

1つ目は、会議での議論を構造化し、ネクストアクションを設定することです。例えば、「本日の議論がこうだったから、ネクストアクションがこうなるよね」と会議の場でネクストアクションを設定できるようにファシリテーションすることで、各々のアクションが明確になります。次回会議までの動きがフワッとならないように、一つひとつの会議ではネクストアクションを具体的に設定し、みんなの時間を有意義に使えるように意識していました。

2つ目は、責任の分担です。例えば、会議で決めたネクストアクションについては、責任者を決めてあとは任せていました。達成責任を私だけではなく、分解してみんなも負うことで、当事者意識を持ってもらうようにしていたんです。そのため、任せたことができていなければ突っ込みを入れたりもして、個人個人の緊張感も高めていました。

 

――コンサルタントとして充実していたように思えますが、なぜ転職活動をしようと思ったのでしょうか。

先ほどもお伝えしたように、チーム一丸で全社改革をしたプロジェクトがきっかけですね。

大学で体育会のラクロス部に所属していたことが影響してるかもしれないのですが戦略を立てるよりは、行動してみんなで売上や数字を達成するほうが好きな性格なんです。

あとはBCGの同期に起業で成功する人もでてきて、焦りはあったかもしれません。当時30代前半だったこともありみんながチャレンジするタイミングでした。私自身もこのままチャレンジしなければ後悔すると思っていたし、結婚や出産などいつ来るかわからないライフイベントを考えるとチャレンジを取れる最後のチャンスだと考えました。

 

ーー当時の転職軸などあったりしましたか?

自分の立場、何を求められているか、会社の存在意義、規模感など様々な軸はありましたが、一番は大事にしていたのは任せてもらえる環境かどうかでした。任される範囲が広いほうが、仕事を楽しめますし、成果にも繋げやすいと思っていて、そこを一番重要視していましたね。

その考えを持ちながら、様々な業界で転職活動をしましたが、最終的には松島(JMDC 代表取締役兼CEO)の信頼して任せてくれる姿勢がドクターネットへの入社の決め手となりました。松島とは一緒に働いた経験はなかったですが、BCGで同期である山元経由で知ってはいました。食事にも何度か行ったことがあり、そのときから度量が大きく、仕事を任せてくれる印象を勝手に感じたんですよね。

 

ーー長谷川さんのキャリアを振り返るとドクターネットへの入社は思い切った選択に感じましたが、実際いかがでしょうか。

そうですね。私自身もキャリアで一番思い切った選択でチャレンジだったと思っています。

それまでは東京大学を卒業し、BCGに新卒で入社して、ある程度王道のキャリアを歩んできたと思っています。その中で、業界も事業詳細も知らない、規模も大きくないドクターネットに入社するのは正直不安でした。

また、そもそもどのような会社かわからない中で、取締役としてまるっと任せてもらえたので、入社してどのような価値を発揮できるのかもわからず、いま考えてもリスクを取った選択だったと思っています。

 

山積みだった課題を本気の全社改革

ーードクターネットと遠隔画像診断支援サービスについて教えてください。 

ドクターネットは、1995年に放射線科の医師が立ち上げた会社です。当時、CTやMRIの画像がデジタル化したことで、遠隔画像診断支援サービスがアメリカで立ち上がりました。それを日本でもドクターネットともう1社が始めました。

当時はCTやMRIの台数が多く、一方で放射線科医が少なかったため、受給バランスが崩れていたんです。しかし、遠隔画像診断支援サービスが日本でも立ち上がったことで、需要が急激に拡大していきました。

その中で、遠隔画像の業界に目を付けたノーリツ鋼機(当時のドクターネット親会社)が、トップシェアを誇るドクターネットを2010年に仲間に迎えたのです。その後もドクターネットは順調に事業を伸ばしていきました。

 

(2022年3月期 通期決算説明資料 P45より)

 

ーードクターネットの競合優位性はなんだったのでしょうか。

ドクターネットの競合優位性は2つありました。

1つ目は、先行者利益です。前提として、遠隔画像診断支援サービスは読影医と病院をつなぎ、両輪をバランス良く拡大していくプラットフォームビジネスになるので、日本で最初にサービスを始めた先行者利益が効いていました。

2つ目は、ノーリツ鋼機にグループインしてからオペレーションが確立されたことです。当時の競合は現役医師が個人事業主として運営していることがほとんどだったため、当社ともう1社以外、営業や組織の機能がありませんでした。

そのため、病院が個人事業主に頼んでも、リソース不足でお断りをされたり、読影結果が期日通りに返却されなかったみたいです。また、読影医が登録をしても病院の契約がないので、仕事に繋がらなかったようです。

その中でも当社は、営業組織があり、オペレーションが整備されていたため、新規施設との契約を増やしながら、読影医と病院をWin-Winな関係に導きました。結果的にプラットフォームの両輪もバランス良く拡大して、競合優位性につながりました。

 

ーー競合優位性を活かして、急成長していったのですね。それでは、その後も順調に事業が成長したのでしょうか。

実はそうではありませんでした。マーケットは拡大していましたが、2016年頃から会社は伸び悩んでいたのです。その状況をノーリツ鋼機は課題視していました。その時期に私が取締役としてドクターネットにジョインしました。

実際に入社してみると、課題が山積みだと感じましたね。経営企画として一つひとつ課題を解決しようとしていた矢先に、松島が私をドクターネットの代表取締役社長兼CEOに任命してくれました。それをきっかけに各部門ごとに改革を進めることにしたんです。

 

ーーまずはどの部門から改革を行ったのでしょうか。

初めに営業部門から改革を進めました。現取締役営業部長の荒木は、私の2年ほど前にドクターネットに入社していて、当時の状況を変えたいと思っていたメンバーでした。その彼を営業部門のトップにして、一緒に改革を行ったんです。

当時の営業は予算に対して未達でした。理由を詳しく調べてみると、訪問活動量のKPIを課してもこなされない、日報も機能していないなど、営業メンバーの意識を変えなければいけない状況でした。

また、各営業メンバーの判断で値引き範囲を決めていたので、間接部門の負担も大きかったんですね。そこで、営業メンバーの意識改革に取り組みながら、営業ルールの標準化などを行いました。例えば、各メンバーに「値引きを判断できるのはこのラインまでです」などといったルールの設定です。その結果、営業部門全体の底上げにつながり、予算達成もするようになりました。

このように毎年1部門改革を進めて立て直しをしています。 

 

――長谷川さんが手を動かすこともあったのでしょうか。 

そうですね。人手が足りず、請求業務まで手掛けていた時期もありました。しかし、業務改革をするときは、まず私自身がやってみなければ、その時点の業務の進め方や改善点などを把握できません。

また、その業務を最大限理解して、改善点やルールを示していかなければ、普段本業で業務を担当しているメンバーが納得しないと考えていました。そのため、納得感を持ってもらうためにも、まずはやってみることを意識していましたね。

業務に入り込むのは楽しかったですし、業務改革にとって必要なプロセスだったと思います。

 

ーー色々と改革を行ってきたと思いますが、当時のメンバーの反応はいかがだったのでしょうか。

ポジティブに受け取ってくれていたと思います。

例えば、オペレーション部門は、純粋な想いで会社を良くしたいと考えていました。

彼女たちは1日8000症例の読影を病院から依頼を受け、0.5日で読影結果を返却しています。そのため、業務効率化は必要不可欠です。彼女たちは患者様のために日々、診断を滞らせてはいけないと向き合っていて、ドクターネットが良くなるのであればと素直に業務改革を受け入れてくれました。

ドクターネットには純粋で前向きなメンバーばかりで、その想いが組織の強みだと思っています。

 

ーーメンバーの「想い」に関して、特に印象に残っているエピソードなどはございますか。

2022年に、システム障害によってサービスが1日停止しました。1日停止すると、先ほど伝えたように、8000症例の読影が翌日に持ち越されます。しかし、1日で1万6000症例は処理できないので、1週間依頼の遅延が続くんですね。

そのとき、オペレーション部門は深夜まで読影医に追加で読影の依頼をし続けて、管理部も施設に遅れることを電話で謝罪してくれました。また、営業は現場でお客様対応をし、システムチームはシステムの復旧に奔走して、全員が目の前の患者様のためにサービスを正常化することに力を注いでくれました。このときは組織の力を感じましたね。

医療現場に根付いたサービスを担っているのが、ドクターネットのメンバーにとってはやりがいになっているのだと思います。ドクターネットは日本で最も大きな画像診断拠点です。医師でなくても、医療を支えることができる事業に誇りを持っています。

 

ーー医師でなくても医療を支えられる事業はやりがいを持てそうですね。長谷川さんがご入社されてから、ドクターネットの事業はどのように変化しましたか。

全社改革をきっかけに、業務のフローが安定したと思います。入社したときは、新規施設の契約をしても正直運用できるか不安がありました。しかし、いまでは業務フローも整えているので、自信を持って新規のご契約もできるようになりました。

また、実際に契約施設数も500ヶ所から1200ヶ所に増えましたし、売上も2016年は25億円だったのが、今期は50億円見込み。利益も3倍まで増え、大きく前進したと胸を張れます。

組織も前向きなメンバーが増え、前進して戦える組織になってきたと自信を持っています。

 

2022年3月期 通期決算説明資料 P44より)

 

ーー長谷川さんがドクターネットを良くすることにここまでコミットメントできた理由についても伺えますか。

そうですね、コミットできた理由は2つですね。

1つ目は、松島が会社を任せてくれたからです。ドクターネットに誘ってくれて、代表にも任命してくれたので、任せていただいたからには、きちんと責任をもって成果を出したいと思ってここまでやってきました。

2つ目は、社員の存在です。真剣に毎日、毎日、1症例、1症例向き合ってくれる社員に、10年後も20年後も良い会社として残していきたい想いがあります。衰退しないように、前進し続けながら、みんなが20年後も働きたいと思える会社を目指してやっています。社員の存在がとても大きいですね。

 

既存事業を続く新しい3本柱の案

――今後のドクターネットの事業戦略について、教えていただけますか。 

今後は、遠隔画像診断支援サービスに続く新しい柱を見つけていきたいと考えています。

これまでは遠隔画像診断支援サービスを軸に事業展開をしてきました。しかし、国の政策で医療費の効率化により、全国に1万2000ヶ所あるCT、MRIの施設削減が行われると思っています。このような環境変化により、遠隔画像診断の業界も揺らぐと考えていて、第2、第3の柱となる事業を開発したいと考えています。

いま考えている事業は3つあります。

1つ目は、画像診断に特化したクリニックです。実は2022年10月に「DN画像診断クリニック東京」をオープンしました。CT、MRIを持つ病院が減ってきたときの画像診断機能の受け皿として必要になる施設だと考えています。

2つ目は、AIの活用です。今後も遠隔ビジネスは成長するので、有限な読影リソースをテクノロジーの力で支えていくためにも取り組みたいと思っています。

3つ目は、海外展開です。中国に支社を構えたのですが、画像診断を軸に海外展開にも注力していきたいと考えています。

 

――JMDCとの連携についてはいかがでしょうか。

ドクターネットでは、年間250万症例程度の画像データを扱っているのですが、利活用ができていません。そのため、この膨大なデータをJMDCと連携して出口戦略として何かできないかと考えています。JMDCの持つレセプトデータと画像データを掛け合わせることで、JMDCグループ全体の企業価値を高めていきたいです。

また、今後の事業戦略の海外展開では、豊富な人材が在籍するJMDCと協力しながら実現していきたいと思っています。

 

――今後事業が変わってくれば、求める人材や組織も変化するかと思いますが、いかがでしょうか。 

遠隔画像診断支援サービスは重要な事業であるため、「医療現場と向き合う」という価値観を持つ人材の採用は継続したいと考えています。また、現在を第二創業期と位置付けて新規事業も立ち上げたいので、事業を考案、実行する組織も必要です。既存事業を担当する部門と新規事業をスピード感を持って立ち上げて実行していく部門を両立しなければなりません。

新規事業を担う組織には、コンサルティングファームで戦略立案を担っていたり、スタートアップで事業開発を手掛けていたりする方などが必要です。また新規事業に興味があり、事業開発に携わりながら新しい風を吹かせてくれるエンジニアの方にも来ていただきたいです。

 

与えられた環境で成果を出してチャンスをつかむ

川下りの写真:右から2人目が長谷川さん

――ドクターネットに入社されてから、プライベートでのイベントが増えたと伺いました。 

はい、実は2022年に出産をしました。社長の立場ではありますが、出産後は時間の制約もあるため、ミーティングの時間などは調整してもらっています。

出産前後はドクターネットの社員を始め、松島と山元にも支えていただき、本当にありがたかったです。仕事のことを考えず出産に集中でき、その後もみんなのサポートで普通に職場復帰できました。

 

ーー育休が取りやすい環境なんですね、最後に長谷川さんの今後のキャリアについて、教えていただけますか。

JMDCグループを俯瞰できる視点を持って、ドクターネットの経営に携わりたいですね。また、海外展開を強化するためにも、私自身がグローバルで戦える人材になっていきたいと思います。

最近、「川下り」のようなキャリア形成がいいのかなと考えるようになりました。進みたい方向を見定めて、激しい川に抗いながらも、川下りを楽しみ、さまざまな経験を得たいと考えています。

偶然性もありながらも、与えられた環境で全力を尽くして成果を出してチャンスをつかむ。その結果、いつか「大きな海」に出すことができればいいと思います。

当社は、人材の多様性が富み、新しい挑戦や働き方など許容度が大きく、マネジメントやプロフェッショナルなど、それぞれの志向に沿ったキャリア形成も可能となっています。今後のキャリアプランを真剣に考えている方にとって、当社での経験はとても貴重だと思います。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。
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