日本の社会課題解決に挑むプロダクトマネージャーがJMDCを選んだ理由

ヘルスビッグデータを活かした事業を幅広く展開しているJMDCには、魅力的な経歴や豊富な経験を持ったメンバーが所属しています。今回は、JMDCのインシュアランス&ヘルスケア本部 ヘルスケア企画推進部で部長兼プロダクトマネージャー(以下PdM)を務める佐野 智美さんに話を聞きました。

 


<プロフィール>
佐野 智美(さの ともみ) インシュアランス&ヘルスケア本部 ヘルスケア企画推進部 部長兼PdM
ソニー、サントリー、全日本空輸(ANA)にて、商品企画やブランドマネージャー、顧客体験価値向上に向けたアプリ開発のプロダクトオーナーなどを経験。その後、日本の社会課題である医療領域に挑戦したいと考え、CureAppに転職し複数疾患および民間向けプロダクトのPdMを担う。JMDCのビジネスポテンシャルに魅力を感じ、2022年9月にPdMとして入社。現在は室長を務めながら、PHRや生命保険会社向けのPdMとしても従事。

 

異業種の越境キャリアを貫く3つの軸

──佐野さんは電機業界から飲料、航空、そして医療と、さまざまな業界を渡り歩かれていますね。どのような軸でご自身のキャリアを選ばれてきたのでしょうか。

振り返ると、大きく分けて以下の3つになります。

  • 人の役に立つものを創る
  • 顧客体験の重視
  • 日本が大好きで、日本の良さを世界に広めていきたい

大学時代から、テクノロジーを人の役に立つように応用したいという想いがあり、理工学部情報工学科で、人の身体や心をデジタライズし、動きをモデリングして最適化する研究をしていました。具体的には、気象が購買行動に与える影響などに取り組みました。

そのようなモチベーションがあったなかでソニーに新卒入社したきっかけは、日本を代表するモノ創りの企業だったこと。商品企画として、WALKMANやVAIO、ガラケーやXperiaを担当し、ハードウェア単体ではなく、ソフトウェアを含めたユーザー体験を踏まえた企画を考えていました。ここでの経験が、私のPdMとしてのキャリアの原点だと思います。10年ほど勤めるなかで、ハードウェアだけではもう一歩踏み込んだユーザー体験を提供するのは難しいかも知れないと感じるようになり、もっと深くユーザー体験、ユーザーの日常に踏み込んだ企画をしたいなと考え、サントリーに転職しました。

 

──なぜ飲料業界に転職されたのでしょうか。

シンプルに「日本の飲み物の美味しさは素晴らしいな」と思ったんです(笑)。その品質の高さを世界に広めたいと考えました。そのなかでもサントリーは世界に誇れる日本ワインを作っているので、この美味しさをもっと広めたい!と面接で話し、入社に至りました。ところが参画してみると、なんと担当は紅茶ブランドや外資コーヒーブランド製品のブランドマネージャーでした(笑)。

最初は驚きましたが、ブランドオーナー、製造、販売がすべて異なるなか、多くのステークホルダーが同じ方向を向いて製品を作るということは、貴重な経験だったと思っています。そこでは商品開発からマーケティングまでを担当していましたが、ハードウェアのような機能価値の世界から打って変わって、情緒価値での勝負がとても新鮮でした。外資コーヒーブランドには、日本上陸以来「サードプレイス」というフィロソフィーがありました。私が担当したコンビニ向けのチルドカップにおいても、その世界観を表現したプロダクトが必要で、高い品質水準や消費者が商品を飲むときの気持ちまでを考え、ストーリー設計した商品を作る必要がありました。

またサントリーの場合は、プロダクトを生み出すところはもちろんですが、プロダクトを生み出してから終売までを管理するのがブランドマネージャーの役割です。企画から終売までEnd to Endで携わったのは、現在のPdMという仕事に活きていると感じます。

 

2度の出産経験から芽生えた社会課題への思い

──サントリー時代には出産も経験されていますね。

2度の出産や育休は自分の人生やキャリアを考え直すきっかけにもなり、ITやシステム等、より自分の経験や強みを活かせるキャリアに転換していきたいと考えるようになりました。そこでシステム開発に関わる部署への異動希望を出し、異動したのが「お客様リレーション本部」です。実はサントリー入社時は、スマートフォンが少しずつ認知され始めたくらいのタイミングだったため、まだデジタルマーケティングがあまり広まっていませんでした。そこからスマートフォンが爆発的に普及し、SNSが発展していったので、SNSに投稿された言葉や画像を解析し、製品がどのようなシーンで飲まれているのか、どういった感想が投稿されるのか等ソーシャルリスニングを高度化してマーケティングや業務のデジタル化を推進していました。

テクノロジーを活用したさらに大きな事業にチャレンジしたいと考えていたときに、たまたま求人募集を見つけたのが全日本空輸(以下ANA)でした。まさにデジタルと人の融合や、デジタル化による顧客体験の向上に取り組んでいたタイミングだったんですね。

 

──それで航空業界に、2度目の異業種転職をされたのでしょうか。

ANAを目指した理由はもう1つあります。出産・育児の経験を通して「自分のやりたいことだけでなく、日本が持っている課題を解決しなければ」という気持ちが芽生えました。まずは海外とつながる場で、日本のサービス品質を世界に伝える。それと同時に、ANAは日本全国に就航しているため、日本の社会課題の1つである地方創生にも貢献するという新たな目標が生まれました。

ただ、実際に取り組んでみて、地方創生は改めて非常に難易度の高い社会課題だと痛感しました。本気でこの課題に取り組むのであれば行政に入り込むしかなくて、いまの私が持っているスキルや経験で役に立てることがあまりない。そんなときに、同じ社会課題という軸で考えたときに、テクノロジーが必要な「医療」分野に気づきました。地方が抱える医療格差の問題は、デジタルによって課題解決できそうではないかと。そこで、ソフトウェアで「治療」を再創造することをミッションとして掲げていたCureAppに転職をしました。

CureAppでは、医師が患者の生活習慣病の改善のために薬のように処方する「治療用アプリ」を手掛けていました。非常にやりがいのあるものでしたが、徐々に医療課題を医療従事者側からの側面だけで解消する難しさが見えてきました。日本の場合は国民皆保険制度があるため「健康は失ってから初めてその大切さに気が付く」ことが多く、個人レベルで未病段階や重症化に対する予防意識が薄いことに気が付いたんです。

そのような考えを持ちながら日々の業務を行ううちに、よく見かける緑色のロゴがあるなと気になってJMDCを知りました。JMDCは基本的に黒子の会社なんです。ところが、IR資料などを調べると、非常におもしろいと感じました。

 

──IR情報から興味を持たれたのですね。どのような点に注目されたのでしょうか。

マネタイズの上手さや、ビジネスモデルの築き方がユニークな点です。JMDCのビジネスは、クライアントからヘルスケアデータをお預かりして、匿名加工するところまでが事業範囲に思えますが、匿名加工したデータを利活用してマネタイズするところまでワンストップでできているところが秀逸だなと感じました。そういった点を含めて一貫してビジネスを考え、本当にそのデータを生むところから売るところまでが自前でできている。

ビジネスとして大きなポテンシャルを感じましたし、JMDCが掲げている日本医療の課題解決をするビジョンに強く共感して、参画を決めました。

 

▲2023年3月期 通期決算説明会資料より抜粋

 

人々のヘルスリテラシーの向上が最重要課題

──JMDCではPdMとしてどのようなプロダクトを手掛けられているのでしょうか。

現在は大きく分けて2つの分野に取り組んでいます。1つは、PHR(Personal Health Record)を活用した健康維持・管理サービス開発。そして、保険会社向けのBPR(Business Process Re-engineering)支援です。開発中のプロダクトについては、詳細はお伝えできないのですが「日本のヘルスリテラシーを上げ、行動変容に資するサービス」をコンセプトとし、企画・開発をしています。

先ほどお話しした通り、日本では国民皆保険制度のおかげで失ってみて初めて、健康の大切さに気付くケースが少なくありません。健康は当たり前ではないことを認識し「いかに健康であり続けるか」を考えてもらうことが大切です。

 

 

たとえば直近では、JMDCの「健康年齢」と連携したサービスを準備しています。「健康年齢」とはご自身の健康状態を分かりやすく理解するための指標のことです。健康年齢がご自身の実年齢よりも、プラス5歳なのかマイナス5歳なのか。それに気が付くことができれば、行動変容につながるきっかけがつくれるのです。

保険会社などのサービスに「算出された健康年齢に対して、顧客の特性に応じて、パーソナルトレーナーのように、その人にとって続けやすく改善効果が期待できるおすすめタスクをAIで推奨するプロダクト」を組み込んで、ユーザーにお届けするようなBtoBtoCの事業化を目指しています。

 

──国民皆保険制度があるなかで、ヘルスリテラシーを高めるのはなかなか難しそうです。

世界トップクラスの社会保障によるハードルは、日々感じています。そのため、一気に社会を変えることを目指しているわけではありません。私たちが目指すのは「データを活用した適切な情報提供によって、できるだけ健康の維持と重症化の防止に努め、医療費を最小限にとどめること」です。

保険業界や製薬業界と連携したBtoBtoCのプロダクトなら、健康を損なってからの対症療法ではなく、予防も含めて原因に対してアプローチできる可能性が高まると期待しています。

 

日本の医療課題を解決できる環境

──さまざまな業界との連携可能なポテンシャルはJMDCの魅力ですね。そういったビジョンを実現するために、佐野さんは日々どのような業務を担当しているのでしょうか。

プロダクトの核となるコンセプトを磨き上げるために、さまざまな部門やグループ企業とのヒアリングやアイデアの壁打ちを行うことが多いです。過去の経験からシステム的な場面知識やUI/UXの知見がありますが、業界課題の解決や業務改善を目指すには、当該ドメインの知識が欠かせません。すべてを学ぶのは難しいため、そこに向き合う担当部署の方にドメイン知識を付与いただいています。

JMDCの強みは、さまざまなグループ会社があり“その道のプロ”が集まっていること。解決したい課題への打ち手がすでにグループ内にあることも珍しくありません。人間関係の数珠つなぎで、どんどん詳しい方につないでもらえる環境です。たとえば、ID発行数500万人超のヘルスケアプラットフォーム「Pep Up(ペップアップ)」の事業部の方へのヒアリングから得た知見は、プロダクト開発においてとても役立っています。

大きい企業の場合、縦割り意識が強くなってしまい、組織間での情報共有を避けることもあるかと思います。その意味では、JMDCは互いにオープンに知識を共有するカルチャーがあり、プロダクトを前に進めやすい環境だという実感があります。

まだ参画して1年ちょっとですが、私のようなPdMの横のつながりは非常に強いと思います。せっかくの横のつながりを活かしていけるように、単発のやり取りで終わらせず、Slackのチャンネルを立ち上げるなどして、私からも役立ちそうな情報交換し、ギブアンドテイクの仕組みづくりを心がけています。

 

──そのほかに、PdMの視点でJMDCにどのような魅力を感じますか。

エビデンスベースでプロダクト開発ができることです。医療データは、基本的には診療データや処方データ、健康診断の結果など、ある時点のスナップショットです。また日本企業は、たとえば血圧計から得られる絶対値としての正確なデータに集中し、高血圧症という課題を解決するは得意です。しかし、高血圧で、糖尿病や脂質異常症を併発している方に対して生活習慣病として課題解決をしようとするときに、このやり方では根本的なアプローチが難しい。

これまで断片的にしか捉えられなかった個々人の健康を、さまざまなデータを組み合わせて追いかけられる。幅広く、質の高いデータを保持して活用し、本質的な解決につながるプロダクトづくりができる環境は、JMDCならではと感じます。

 

▲2023年3月期 通期決算説明会資料より抜粋

 

──今後、JMDCでPdMとして佐野さんが達成したいことを聞かせてください。

最大の目標は、増大し続ける日本の医療費増加のスピードを抑えることです。親として、子どもたちが安心して暮らし続けられる日本を実現できるように、できるだけ早く解決していきたいですね。大げさに聞こえるかもしれませんが「日本の医療課題を解決できるのはJMDCだけ」と信じて参画し、いまもその考えは変わっていません。そのためにもJMDCのPdMの1人として、これから多くの人々に使われるものを生み出し、育てるつもりです。

サービスはリリースして終わりではなく、使われて初めて意味が生まれます。いまだに日本は、プロダクトを産んで終わりという考え方が強いように思います。リリース前の構想に多大なリソースを割きますが、結局生み出したものが本当に社会から評価されるかは、世に出してみないとわかりません。いまはデジタル化が進んだおかげで、ユーザーの評価が非常に正直に、ビビットにデータとして表れてきます。だからこそ、磨き込むより先に、もっと柔らかい段階で社会に放ち、ユーザーの反響を真摯に受け取り、すぐに改善する。そのように、プロダクトを社会実装するまでがPdMの使命だと、私は考えています。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。
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