国内最大規模の医療データベースを持つJMDC。近年、その事業ポテンシャルをさらに広げる取り組みを展開しています。
その一翼を担っているのが、製薬本部コンサルティング部です。コンサルファーム出身者や医療現場の経験を持つ人はもちろん、異業種からの転職者や新卒社員まで多様なメンバーが活躍しています。今回は、そんなスペシャリスト集団のリーダーを務める田中重雄さんに、日々の業務やチームが大切にしている価値観について聞きました。
<プロフィール>
田中 重雄(たなか しげお)株式会社JMDC 製薬本部 コンサルティング部 マネージャー
大阪大学薬学部卒業。薬剤師としての臨床経験を経て、参天製薬に勤務。10年超に渡り、学術・マーケティング・経営企画室と、オペレーションから戦略企画まで幅広い経験を積む。その後、医療系M&A、産学官連携コーディネータ、AIスタートアップでの製薬向けコンサルと、医薬・医療業界での課題解決シーンを多角的にリード。2020年4月、JMDCに入社。COO杉田玲夢(※取材当時。現CMO)とともに、製薬本部コンサルティング部の立ち上げに従事。
クライアントの悩みに応える「地に足のついたデータ活用」
ーーJMDCの製薬本部コンサルティング部(以下、コンサル部)は、どのようなお仕事をしているのでしょうか?
主な業務は、RWD(リアルワールドデータ)を活用して、製薬企業の活動や医療現場の改善を支援することです。
これまでJMDCでは、日々の営業活動として、RWDデータそのものやデータ分析用ツール、あるいはそれらを統計解析するナレッジ等を提供してきました。
2020年4月に立ち上げたコンサル部は、クライアントの課題にさらに踏み込み、型にはまらない独自のフレームワークを設計しながら、ときに複数の情報源を編み合わせてRWDの価値最大化を図ろうとするチームです。
従来の営業部がクライアントにとってのデータの「案内人」なら、コンサル部は「調理師」のような存在だと捉えています。
案内人の仕事は、注文に即した品物の提供です。たとえばクライアントから「こういう要件で、こういう集計をしてほしい」というオーダーが来たら、「それであればこのような定義でデータを抽出しますね。」と求められる内容を的確に具現化してお返ししていきます。
一方で、調理師はより自由度の高い対応になります。「この課題を解決していくのであれば、これとこれを組み合わせて、こういうソリューションはいかがですか?」と、自ら提案をしていくことが求められます。ときには、データを初期的に分析して見えた仮説をもとに、課題提起から入ることもあります。
従来のデータやツールだけでは解き明かせない課題にまでアプローチする。これがクライアントに提供するソリューションの「付加価値」となり、JMDCのビジネスサイズを押し広げています。
コンサル部は2年前に杉田と私が2人体制で立ち上げたばかりですが、徐々にメンバーが増えて実績を積み上げてきました。この4月からは、3チーム体制となり、ソリューションもヒトも多様化しながら、製薬本部の姿をデータベンダーからコンサルティングチームへと進化させていくフェーズに入っています。
ーー田中さんから見たコンサル部の仕事の醍醐味は何でしょうか?
一言で言えば「地に足のついたデータ活用」ですね。AI界隈にありがちな夢物語でもなく、いわゆる勘と経験と度胸のような精神論でもない。リアルな記録に基づいているからこそ真実味や手触り感のある解を導き出せるのが、私たちの強みであり魅力だと思います。
JMDCは、国内有数のデータセットを持っています。なかでも健康保険組合に由来するデータベースは、日本の人口の約10分の1をカバーするような規模。これは同質のDBにおいて他に類を見ない規模です。コンサル部では、こうした自社データのほかに、各製薬会社が保持している活動記録や調査結果のようなIn-houseデータも授受しながら示唆出しに活用します。
▼弊社の扱うデータについての記事もございますので、ぜひ一読ください。
規模の大きなデータが特に威力を発揮するのが、たとえば希少疾患の領域です。日本に5万人以下で症例の少ない希少疾患は、実際どのくらいの患者さんがいるのかはおろか、そもそも「患者さんのヒストリーの可視化や理解」さえできていないケースもあります。
その場合、製薬会社の多くは「とある患者さん」の声や、「患者さんを診ているある医師」の声、などを定性的かつ相当に断片的に収集し、ファクトと見なさざるを得ないでしょう。しかし前述のとおり、いま私が扱えるアセットであれば、希少疾患の患者さんであっても、より定量的に、より俯瞰的に、診療現場の実態を紐解くことが可能です。
医師や企業だけでは発見できないケースもある患者さんの存在を拾い上げて追体験し、エビデンスを踏まえた支援ができるのはJMDCならではないでしょうか。
私自身も、以前は薬剤師として医療の現場を見てきたこともあり、希少疾患の診療環境の改善に何か貢献したいという思いを持って、JMDCに入社しました。こうした「自分のやりたいこと」を、即座にソリューションとして提供できる点も、この仕事の大きなやりがいだと感じます。
多様性あるチームで、楽しく働き続けるための3つの「Shared Value」
ーー田中さんのチームはどんな雰囲気ですか?
3チーム体制になったコンサル部のチームには、それぞれの雰囲気を表す名前がついています。「春一番」「嵐」、そして私がリーダーを務める「そよ風」です。
私と5人のメンバーから構成されるそよ風チームは、「落ち着き冷静に、家族のようにフラットな関係性」が特徴かなと思います。
メンバーのバックグラウンドも多種多様です。各チームにいるコンサルファーム出身者はもちろん、私のような元・薬剤師や看護師などの医療現場の経験者、MR。そして、まったく異業種からジョインした元経営者、農学部を卒業した新入社員と、ユニークな顔ぶれです。
経歴だけでなく、個性も強くて、メンバーみんなこだわりが強いですね(笑)。
ーーチームで働く上で大切にしていることはありますか?
そよ風チームでは、私が考案した「Shared Value」という共通の価値観を掲げ、日々の行動指針にしています。「①オープンコミュニケーション」「②利己的ではなく利他的であれ」「③遊び心でまじめに働く」の3つです。
「オープンコミュニケーション」は、個の能力で突き進む側面がありがちなコンサルティングという仕事だからこそ、あえて明文化しました。特にJMDCのコンサル部は立ち上げから間もないので、個人の実績にも固執しすぎず、知見の発信と集約をチームの力にしていくことが重要だと考えています。
それを意識して立ち上げたのが、Slackチャンネル「チエノワ」です。担当の製薬会社の公表資料等をキャッチして共有したり、契約締結のような頻度低くもおざなりにできない業務フローで手戻りが出ないよう周知徹底したり、とにかく組織知・組織力を上げるための土壌を醸成しています。
大切なのは、「情報を発信しやすい空気を作ること」。たとえば僕は、過去にエクセルでデータを加工編集する際に便利なショートカットキー等について投稿したことがあります。
私自身もそうだったように、初めてコンサルティングに携わるメンバーもいます。ちょっとした効率化のテクニックなどは、リーダー自らも発信して「知らないことを恥じる必要はないんだ」と、積極的にチーム内の目線に格差が生じないように心がけています。
2つ目の「利己的ではなく利他的であれ」は、私たちの仕事において不可欠な基本姿勢を忘れないための行動指針です。
JMDCのコンサルティング業務は、前提として、クライアントや医療現場のためにあります。私たちのビジネスの先にある顧客目線を忘れてはなりません。
資料やプレゼンなどでは、表現一つひとつまで「これで本当に伝わるのか?」「お客さんにとって喜ばしいものなのか?」と、考え抜きます。チームミーティングでも「So What?(それによって何が価値となるのか)」は、頻繁に投げかけられる問いです。
最後の「遊び心でまじめに働く」の目的は二つあります。
一つは、楽しんで働き続けてもらうこと。仕事を長く続けていくには、真面目さだけではなく、メリハリが重要。そのためには、自分の心身の状態に正直であることが欠かせません。
だから私も、チームのSlackでたまに「ちょっと昼寝してきます」と書き込んだりしているんですよ(笑)。「仕事は大事だけど、無理はしなくていいんだ」という空気をつくりたいのです。
遊び心のもう一つの目的は、自由な発想を持ってもらうこと。
プロジェクトのフィジビリティやオペレーションの効率性を担保するという意味では、実績のあるソリューションを横展開するほうがメリットが大きい。しかしコンサル部の状況やミッションを鑑みると、個別クライアントが抱える悩みに対して、オーダーメイドでソリューションを設計することが重要といえます。
常に新しいアイデアやソリューションに挑戦する姿勢をもち、探究心を持って課題解決を楽しんでもらいたい。たとえ多少遠回りになったとしても、本人がモチベーション高く取り組めることのほうが、中長期的な成長としては意義が大きいと私は思います。
実際、サービスの新規開発のような自由研究的な動きかたについて、会社から許されている裁量も大きいですね。たとえば、製薬本部にいながらにして「JMDCのRWDを食品業界の分析にも転用できるのではないか」と、興味関心を持って模索するようなメンバーもいます。
▼当社のRWDを食品業界や化粧品業界に転用をしようと模索する早川さんの記事です。ぜひ一読ください。
チームで成果を出すカギは「やりたいことの尊重」と「貢献の実感」
ーーそよ風チーム全員が高いパフォーマンスを発揮できるように、リーダーである田中さんはどんな工夫をされていますか?
メンバー個々人の感情面は、迅速にキャッチアップし、マネジメントするように心がけています。リモートの環境にあっても、毎日少なくとも5分くらいは口頭で雑多なコミュニケーションをとっていますね。
特に、進化のスピードが著しいJMDCだからこそ、コンサル部のあり方に関わる事業戦略や活動方針などを発信した際は、必ず受け止め方をフォローするようにしています。未経験者にとってハードルが高すぎないか、逆にベテラン社員にとってやりがいを見いだせる環境か、両にらみにすることが重要です。
あわせて、私がリーダーとして大切にしているのは、個人の「やりたいこと」の尊重です。
成果とは「会社に求められること」と「個人のやりたいこと(モチベーション)」のかけ算だと思っているんです。もちろん、やりたいことばかりでは、事業として成り立ちません。でも、求められるものだけをこなすのでは、チームへのエンゲージメントも下がって、馬力が出ない。
なので、そよ風チームでは、あえて「分業制」をとっています。たとえばコンサルティング提案の設計が好きなら、資料作りを含め特化・研鑽してもらう。人と話すことが好きなら、クライアントとの窓口を深々と担ってもらう、といった具合です。
コンサル部に発信しうる、私のチームの分業の好例は「新入社員によるクライアント研究」です。
入社したばかりの頃って、まだ右も左もわからない状態ですよね。まずは、「とにかくインプットしたい」という気持ちが強い。その知的欲求を最大限に活かしていただきつつ、自チームのクライアントについて、どんな主要製品を持っているのか、どんな経営戦略かなどを徹底的に調査する。その上で、新入社員ならではのフレッシュな視点で提案のタネを見極めて、ひたすらにアイデアを出してもらうのです。
この取り組みは、未成熟なリソースの最大活用という位置づけでもありつつ、ベテラン社員がフットワーク軽く新しい提案やアクションに臨むきっかけを得られる機会でもあるという、まさしく二度おいしい取り組みです。
新入社員のアイデアなので、当初は結果までは求めていませんでしたが、そのメンバーがもともと医療現場の経験者ということもあって、想定以上のアウトプットを拠出してくれています。実際にクライアントのマーケティング部長にぶつけたところ、関心を惹き、アポイントをいただいたという成果等にもつながっています。
▼新入社員で活躍している大久さんの記事です。ぜひご覧ください。
このような一連から芽生える「仲間や顧客の役に立っている」「自分のやりたいフィールドでチームの成果に貢献できる」という実感は、働き続ける上で不可欠なものです。
ーー分業体制にはメリットを感じた一方で、業務が属人化するリスクもあるのでは?
そうですね。そういったデメリットを防ぐために、”オープン”や”利他的”といった文字を織り込んだ「Shared Value」を掲げています。画一的に仕事を押し付けることはしない、でも、交わり方は画一的に規定する。その結果、そよ風チームはコンサル部として遜色のないスペシャリスト集団として、パフォーマンスを発揮できていると考えます。
交わり方の一例として、そよ風チームには、困りごとがあるときにメンバー全員を招集する「そよ風クイック」という会議があります。
各々の仕事にちゃんと配慮して、10〜15分程度の短時間でおこなうユニークな会合。「このクライアントの悩みには、どうアプローチすればいいか?」「前例のない提案の価格設定、納得感のあるロジックをどう構築すべきか?」などを全員でディスカッションします。一見非効率に映るかもしれませんが、分業制を許容したチームだからこそ意味を成す仕組みといえるのではないでしょうか。
なお、答えやベストを探すのではなく、いろんな見方を洗い出すのが目的です。多様なスペシャリストが集まっているからこそ、それぞれの引き出しからの集合知が生まれる。メンバーたちと意見を交わすと、私自身としても、ソリューションの可能性が無限に広がることを実感しています。
コンサル部もそよ風もまだまだ発展途上で、一人ひとりの声を取り入れながら「全員サッカー」で動いている部分があります。得意領域を持っている人、そして何よりも「データを活用して、自分はこんなことがやりたい」という強い意志のある方に、ぜひ私たちのチームに参加して、力を発揮していってもらえたら嬉しいです。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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